広報活動

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2013年4月18日

理化学研究所

白血病再発の主原因「白血病幹細胞」を標的とした低分子化合物を同定

-急性骨髄性白血病に対する生体内での効果をマウスで確認-

化合物投与による骨髄での白血病細胞減少・正常造血回復の様子

化合物投与による骨髄での白血病細胞減少・正常造血回復

急性骨髄性白血病は、遺伝子異常が原因で起こる再発率が高い血液がんです。再発を防ぎ、根治に導く治療法の開発が強く求められています。これまでに、理研の研究者を中心とする共同研究グループは、白血病再発の主原因となる白血病幹細胞を見いだし、体のどこに残りなぜ再発するかなどを明らかにするとともに、白血病幹細胞に発現し、治療標的となる候補分子を多数発見してきました。

今回、その候補分子の中から、リン酸化酵素(キナーゼ)「HCK」を標的に選び、HCKの酵素活性を最も強く阻害する低分子化合物として、数万の化合物の中から「RK-20449」を同定しました。試験管内の実験では、 RK-20449はごく低濃度から効果を発揮し、濃度が高くなるのに応じて患者由来の白血病幹細胞を死滅させました。また、白血病状態を再現した「白血病ヒト化マウス」を作製し、生体内での有効性を調べたところ、Flt3という遺伝子に異常を持ち、従来の抗がん剤が効かず悪性度が高い症例に対して有効なことが分かりました。

数週間にわたってRK-20449をマウスに毎日投与すると、マウスの末梢血から全てのヒト白血病細胞がなくなり、2カ月後には骨髄でも白血病幹細胞を含むほぼ全ての白血病細胞が死滅しました。急性骨髄性白血病を発症すると、骨髄では赤血球など正常な血液の生産ができず、貧血になります。同時に脾臓が大きくなる脾腫を起こします。従来の抗がん剤を投与しても貧血や脾腫は改善されませんでしたが、RK-20449を6日間連続投与したところ、貧血・脾腫とも改善しました。52日間の連続投与では、末梢血で再び白血病細胞が増加することはなく、骨・脾臓とも正常でした。この成果は、悪性な症例でも幹細胞レベルで白血病細胞を根絶できる、新しい治療薬の開発につながると期待されます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター ヒト疾患モデル研究グループ
グループディレクター 石川 文彦 (いしかわ ふみひこ)