広報活動

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2013年4月23日

理化学研究所

1つの受容体がさまざまな刺激に応答できる仕組みの一端を解明

―感覚受容の重要な役者TRPチャネルの理解を進める一歩に―

TRPGzの機能メカニズムの模式図

今回の結果から推測されるTRPGzの機能メカニズムの模式図

生体膜には、外界からの刺激を体内情報に変換するイオンチャネル型受容体があります。これらの受容体はイオンを透過させることで情報伝達を行っています。なかでも受容体のひとつ「TRPチャネル」は複数の刺激に応答することで知られています。

ヒトは27種類のTRPチャネルを持っており、それぞれによく似た「チャネル」構造と独自の細胞内構造を有します。しかし、なぜ1つの受容体が複数の刺激に応答できるのか、その詳しい仕組みは分かっていませんでした。

理研の研究者らは、その仕組みを理解するため、TRPチャネルの機能と立体構造の関係の解明に取り組みました。

赤カビ病を引き起こす植物病原菌からTRPチャネルの基本モデルともいえる「TRPGz」を新しく見つけ、酵母で発現させて機能解析を行いました。その結果、細胞内側には複数の刺激への応答を制御する領域があることを発見しました。この領域について、さらにSPring-8を用いたX線結晶構造解析をはじめとした立体構造解析を行ったところ、4つの特徴的な基本構造が弱い相互作用で束ねられた状態とバラバラの状態を行ったり来たりしていて、束ねられているときにだけ浸透圧や温度上昇に応答することが分かりました。そして、バラバラの状態のときに他の刺激に柔軟に反応できることが明らかになりました。

外界からのさまざまな刺激を感知する感覚受容は、生体反応の中でも仕組みの解明が進んでいない領域の1つです。今回の成果は、TRPチャネルが関わる多くの生命反応への理解を進めるとともに、鎮痛薬などの創薬の標的として研究が進んでいるTRPチャネルの分子機能の理解を深める重要な情報となります。

独立行政法人理化学研究所
放射光科学総合研究センター 分子シグナリング研究チーム
チームリーダー 山下 敦子(やました あつこ)
(現 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授)