広報活動

Print

2013年5月13日

独立行政法人理化学研究所
慶應義塾大学医学部

思春期特発性側彎症(AIS)発症に関連する遺伝子「GPR126」を発見

-AISの発症機構の解明、新たな治療法の開発への突破口に-

アリザリンレッド染色による石灰化(赤色)の評価。石灰化とは、カルシウムが沈着して正常な骨ができていることを示す。コントロール(正常)に比べてノックダウンは、石灰化が非常に少ない。

GPR126の発現を抑制させたゼブラフィッシュの
骨化の遅延と成長障害

側彎(そくわん)症は背骨が曲がる疾患です。その多くは原因が特定できない特発性側彎症で、なかでも発症の頻度が高いのが「思春期特発性側彎症(AIS)」です。 AISの発症には遺伝的な要因が関わるとされ、原因遺伝子の探索が行われています。

理研の研究者らを中心とした共同研究グループは、ゲノムワイド相関解析を使いAISの原因遺伝子探索に取り組みました。

まず、日本人の患者と対照者約2,500人の集団についてヒトのゲノム全体をカバーする55万個の一塩基多型(SNP)を調べました。この中でAISと強い相関関係を示したSNPについて、別の約25,000人の日本人集団を用いて相関解析を行い、AISの発症と強い相関を示すSNPを見つけました。このSNPは軟骨に強く発現する「GPR126」という遺伝子領域内に存在し、この遺伝子の機能を阻害すると骨化が遅れることを発見しました。また、日本人ではこのSNPを持つとAIS発症のリスクが1.28倍高まることが分かりました。さらに、このSNPとAISとの相関は、中国人や欧米人を用いた同様な相関解析でも確認できました。

GPR126はヒトの身長や体幹の長さにも関与する遺伝子で、GPR126の機能を欠損させたマウスでは成長障害があることも報告されています。また、GPR126の発現を抑制したゼブラフィッシュは、椎骨の骨化が遅れ体が小さくなることが分かりました。

今後は、オーダーメイド医療に向けてゲノム情報を基にしたAIS診断・予測モデルの作成に着手し、またさらに研究を進めることでAISの病態理解が進んで、新しいタイプの治療薬の開発につながると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 骨関節疾患研究チーム
チームリーダー 池川 志郎 (いけがわ しろう)