広報活動

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2013年6月4日

独立行政法人理化学研究所
独立行政法人科学技術振興機構
公益財団法人高輝度光科学研究センター

塗るだけできれいに配列する半導体ポリマーを開発

-塗布型有機薄膜太陽電池の高性能化に向け大きな一歩-

評価した素子の模式図と電気特性

評価した素子の模式図と電気特性

「トレードオフの関係」というフレーズがあります。複数の要素がお互いに相反する利害を伴い、どちらかのメリットを選ぶと、それによって別のデメリットやリスクが出てくることです。あちらを立てればこちらが立たず。悩ましいですね。

さて、再生可能エネルギーとして注目の太陽光発電では、より高効率かつ低コストで発電可能な電池の研究開発が進んでいます。中でも半導体ポリマーを用いた塗布型有機薄膜太陽電池は、軽くて柔軟、かつ印刷プロセスで安価に作製できるという特徴を持ち、次世代の太陽電池として期待されています。実用化への最大の課題はエネルギー変換効率の向上です。これを実現するためには、半導体ポリマーをより密に配列して結晶性を高めるとともに、配列の方向をそろえる必要があります。さらに、印刷プロセスで作製するためには有機溶媒にポリマーを溶かさなければなりません。しかし、ポリマーの結晶性を高めると溶解性は低下するという、まさに“トレードオフの関係”であり、これらを両立できる材料の開発が求められています。

理研の研究者を中心とした研究グループは、結晶性の高い半導体ポリマーに、直列に炭素原子が並んだアルキル基を導入し、溶媒への溶解性を高めることに成功しました。さらに、このアルキル基を使うと、電流が流れる方向にポリマーの配向もそろい、効率的な電荷の輸送が可能になりました。

作製した素子のエネルギー変換効率は、従来の5%から8.2%に改善、電荷の移動度は1桁向上しました。

今回、塗るだけで理想的な結晶・配向状態を実現し、良好な電気特性を示す半導体ポリマーの分子設計・合成技術を開発しました。今後、エネルギー変換効率の向上につながるとともに、新しい電子デバイスに展開可能な有機材料の開発にも役立つと期待されます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 超分子機能化学部門 創発分子機能研究グループ
グループディレクター 瀧宮 和男(たきみや かずお)
上級研究員 尾坂 格(おさか いたる)