広報活動

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2013年6月14日

独立行政法人理化学研究所
独立行政法人科学技術振興機構

ニホンウナギから人類初のビリルビンセンサー

-ウナギが光る仕組みを解明、その特性を利用して臨床検査蛍光試薬を開発-

シラスウナギの全身(左)と胴体横断面(右)の蛍光像

ウナギの季節です。土用の丑の日にウナギを食べるようになったのは江戸時代から。なんでも、博識で発明家でもあった平賀源内が、夏場にウナギが売れなくて困っているウナギ屋に頼まれ、窮余の一策として出したアイデアと言われていますが…。すると元々は夏に食べるものではなかったんですね。昨今は、稚魚のシラスも値上がり気味。食通もため息の状況といったところです。

ところで、2009年に、鹿児島大の林征一教授が、ニホンウナギの筋肉に緑色蛍光タンパク質が存在することを報告しました。ただ、どうして光るのか、その仕組みは解明されてはいませんでした。理研の研究チームは、その緑色蛍光タンパク質に対応する遺伝子を突き止め、「UnaG(ユーナジー)」と名付けました。また、UnaGの蛍光の仕組みを調べた結果、UnaGに低分子化合物が特異的に結合して初めて蛍光を出すことが分かりました。さまざまな哺乳類サンプルを使って探索試験を行ったところ、「ビリルビン」がその低分子化合物であることが分かりました。

ビリルビンは赤血球に含まれるヘモグロビンの代謝産物の1つで、この量が異常に増えると黄疸(おうだん)症状が表れます。血清ビリルビン濃度は血液や肝臓の機能を評価する指標であり、一般の健康診断の項目にも含まれ、新生児黄疸を診断するうえでも必要な測定値です。そこで、研究チームはUnaGとビリルビンの結合を利用して、血清に含まれるビリルビンを簡単かつ迅速に測定ができ、既存の測定法に比べて3桁以上も高感度で、1桁以上高精度な定量法を開発しました。UnaGをビリルビンセンサーとして活用した蛍光測定法です。従来の測定法はビリルビンを直接測ることができず、複雑な工程が必要であり、時間がかかる上に感度が悪いなどの難点がありました。今回研究チームが開発した方法は、これらの問題をすべて解決しました。さらに、UnaGの凍結乾燥試料は輸送や保管に冷凍・冷蔵の必要がなく、簡便にビリルビンを定量することが可能なので発展途上国や辺地での医療に役立ちます。

今後は、血清ビリルビン濃度の高精度測定を持続的に行うことや、測定を血液以外のサンプルに広げ、ヒト体内のビリルビンの動態の理解などにつなげていきます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チーム
チームリーダー 宮脇 敦史 (みやわき あつし)
基礎科学特別研究員 熊谷 安希子 (くまがい あきこ)