広報活動

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2013年6月20日

理化学研究所

“土に還る”バイオマスの分解・代謝評価法を構築

-環境・バイオマス試料の多角的な分析ツールによる統合的な解析に成功-

熾烈な生存競争が展開されている環境代謝分野と、ホットな分析トピックスの図

熾烈な生存競争が展開されている環境代謝分野と、ホットな分析トピックス

夏に向かおうとしている季節に何なんですが、秋冬のお話で恐縮です。植物は秋から冬にかけて、葉を落としたり枯れたりして土に戻っていきます。土の中では微生物などによって分解・代謝されて栄養となり、次の春に備えます。空気が少ない土の中ではさまざまな役割を持った微生物が共生し、それぞれが個々の分解能力を補完し合いながら、他の微生物が利用可能な状態へと変化させる「共代謝」と呼ばれる分解・代謝反応が行われています。しかし、植物の複雑な立体構造の違いが分解や代謝にどう影響するのかなど、分解・代謝の詳細なメカニズムは分かっていませんでした。

理研の研究チームは、植物バイオマスの主要な成分である高分子物質の複合体「リグノセルロース」を用いて、土の中の微生物の分解・代謝反応のメカニズムの解明に取り組みました。そのために、リグノセルロースのように溶液に溶けにくい高分子の解析法や、熱力学的性質の評価法、微生物の群集構造の解析法などで集めたデータを評価できる「土壌微生物生態系によるバイオマス分解・代謝評価法」を新たに構築しました。

実験では、稲わらのリグノセルロースを粉砕して立体構造を変化させ、その立体構造や組成、熱力学的性質などを評価し、立体構造の変化によって微生物による共代謝の場がどう変化するかを調べました。その結果、リグノセルロースの立体構造の違いで分解代謝物が異なり、産生量も大きく変化することや、分解した構造の違いでそれを利用する微生物群が変化し、最終的にそれぞれ異なる微生物群集を形成することが分かりました。これらから、リグノセルロースの持つ高次構造が、分解・代謝の経路や、それに関わる微生物種などの微生物生態系に大きな影響を与えることが明らかになりました。

今回の成果は、土壌中で起きている共代謝反応の化学的な理解や、農林業や地球化学に関する土壌評価などへ応用できると期待されます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 統合メタボロミクス研究グループ 環境代謝分析研究チーム
チームリーダー 菊地 淳 (きくち じゅん)