広報活動

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2013年6月24日

独立行政法人理化学研究所
独立行政法人科学技術振興機構

簡便で生体試料にやさしい組織透明化試薬「SeeDB」を開発

-神経細胞の微細な形状や接続の様子を脳丸ごと3D解析-

ポイント

  • 微細な細胞形状を保持しながら短時間で組織を透明化
  • 2光子励起顕微鏡と組み合わせてマウス脳の“回路図”を丸ごと探索可能に
  • SeeDBを用いて、匂い情報処理を行う嗅球の微細な神経回路構造が明らかに

要旨

理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、厚みのある生体組織をそのままの形状を保持しながら、簡便に透明化する新しい試薬「SeeDB(シーディービー)」を開発しました。これは、理研発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)感覚神経回路形成研究チームの今井猛チームリーダーと柯孟岑(カ モウシン)研修生(京都大学生命科学研究科博士課程)、藤本聡志研究員による研究チームの成果です。

現代のライフサイエンス研究では、細胞や組織の微細な形状を3次元的に観察できる蛍光イメージング技術の重要性が高まっています。例えば、共焦点顕微鏡[1]2光子励起顕微鏡[2]を用いると、生体の微細な3次元蛍光画像を取得できます。しかし、生体組織においては光散乱[3]の影響から、深部のイメージングは数100μmまでが限界でした。近年、深部イメージングを行うために組織を透明化する方法がいくつか開発されていますが、透明化に時間や手間がかかるうえ、生体の微細な構造が損なわれるといった問題があり、より簡便で生体試料へのダメージが少ない透明化法が望まれていました。

今回研究チームは、ハチミツや果物などに多く含まれるフルクトース(果糖)を主成分とする組織透明化試薬SeeDBを開発し、簡便かつダメージを抑えて組織を透明化することに成功しました。SeeDBは組織に対する変性作用が無いうえ、透明化に伴って生体試料の大きさや形状を変化させません。また、蛍光タンパク質やさまざまな蛍光神経トレーサー[4]も安定に保持されるため、生体の微細な形状、例えば神経細胞の接続パターンの解析などに適しています。

研究チームは、実際にSeeDBを用いて厚さ6mmのマウス脳を透明化させ、2光子励起顕微鏡で観察しマウス脳全体を完全に可視化できることを示しました。さらに、従来は不可能だった左右の大脳半球をつなぐ脳梁線維の 1本1本を区別した追跡や、匂い情報処理の中枢である嗅球における詳細な神経細胞の配線様式を明らかにすることにも成功しました。

今後、本技術は、脳の神経回路図を丸ごと解明するコネクトーム[5](神経接続様式の総体)研究に役立つと期待できます。

本研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業さきがけ、日本学術振興会科学研究費補助金、三菱財団、住友財団、中島記念国際交流財団の助成によって得られたもので、米国の科学雑誌『Nature Neuroscience』オンライン版(6月23日付け:日本時間6月24日)に掲載されます。

背景

生体の成り立ちや機能を理解する生物学において最も基本なことは、今も昔も「見る」ことです。17世紀、イギリスのロバート・フックは当時発明されたばかりの顕微鏡を使ってコルクの切片を観察し、生物の基本単位である細胞を発見しました。また、今から100年以上前、スペインの神経解剖学者サンティアゴ ラモン イ カハールは、脳切片を使って神経細胞の染色像を丹念に観察して、神経細胞(ニューロン)が脳の情報処理の最小単位であるという説を唱え、その後の神経科学の発展に大きく寄与しました。

ロバート・フックの時代から現代に至るまで、組織の形態を観察する際には、組織を薄くスライスして2次元像を観察する以外にありませんでした。従って、生体組織の3次元像、例えば数mmにわたって突起を伸ばす神経細胞の形状の全貌を知るには、従来、脳切片の2次元像を多数集めて3次元に再構築するという、非常に骨の折れる作業が必要でした(図1)。

近年、GFPなどの蛍光タンパク質やさまざまな蛍光色素が開発されたことから、生体試料の画像取得には蛍光顕微鏡がよく使われるようになりました。とりわけ、3次元の蛍光画像の取得が可能な共焦点顕微鏡や2光子励起顕微鏡が普及してきています。しかし、生体組織中では光散乱が生じるため、共焦点顕微鏡で数10μm、2光子励起顕微鏡で数100μmの深さまでしか高解像度の画像を得られませんでした。

最近、光散乱を減らし、より深部までの3次元蛍光画像を取得するため、ホルマリン固定した生体試料を薬剤などで処理する「透明化」の手法がいくつか開発されてきました。光散乱は、試料と溶媒の屈折率の不一致が原因と考えられるため、光散乱を減らして生体試料を透明にするには、溶媒(水分)を高屈折率液体に置き換える(BABB法[6]など)、あるいは生体試料の高屈折率成分(タンパク質や脂質など)を取り除くか変性させる(Scale 法[7]CLARITY法[8]など)、といったことを行います。しかし、こうした透明化法は生体組織や蛍光色素に対してダメージを与えたり、非常に手間や時間がかかったりするという問題があり、より簡便で生体組織へのダメージが少ない透明化法が望まれていました。

研究手法と成果

(1)生体試料にやさしい透明化試薬「SeeDB」の開発

BABB法では、屈折率の高い有機溶媒が透明化試薬に使われていますが、蛍光タンパク質の変性や、生体試料の変形などの問題がありました。そこで研究チームは、屈折率が高く、かつ生体試料へのダメージが少ない水溶性試薬について検討しました。その結果、フルクトース(果糖)と水および微量の還元剤からなる透明化試薬「SeeDB」の開発に成功しました。この試薬の名称は、脳深部まで見ることができるという「See Deep Brain」に由来して名付けました。フルクトースはハチミツや果物にも多く含まれる糖で、普段の食生活でも極めて馴染み深い化合物です。

SeeDBは、ホルマリン固定した脳などの生体試料をわずか3日程度で透明化することができます(図2)。従来の方法(2~3週間)に比べると格段に早く、手順も簡便です。また、蛍光タンパク質をはじめとする多くの蛍光試薬の蛍光を保持でき、蛍光イメージングに適しています。

特に、脂溶性の蛍光神経トレーサーのDiIで染色したサンプルでも透明化できるという点は大きな利点です(図3)。DiIは、ホルマリン固定した脳組織の神経細胞の形態を観察するのに非常に有用で、神経科学研究において広く使われていますが、従来の透明化試薬はいずれもDiI色素を流し去ってしまうという問題がありました。しかし、SeeDBではそのような問題が無いため、蛍光タンパク質の遺伝子導入ができないサンプル(例えば、ヒトの死後脳標本など)でも、DiIで染色して神経細胞の3次元形態解析を行うことが可能になると考えられます。

SeeDBの重要な利点として、生体試料へのダメージがほとんど無い点も挙げられます。従来の透明化法はいずれも生体試料のサイズや形状、組成を損なってしまうため、微細な形状の定量的な解析には不向きでした。一方、SeeDBで処理したマウスの脳は、透明化の過程で大きさの変化や微細構造の変化は無いため、生物の形態形成や機能を定量的に理解するという現代生物学の要請に応えることができます。

(2)マウス脳の蛍光イメージング

研究チームはSeeDBの威力を最大限に引き出すために、深さ8mmまで観察が可能なカスタムメイドの対物レンズと2光子励起顕微鏡を用いて、SeeDB処理を施した蛍光標識マウスの脳(厚さ6mm)の蛍光イメージングを行いました。その結果、脳の上から下まで高解像度の画像を取得することに成功しました(図4図5 YouTube:SeeDBと2光子顕微鏡によって取得した蛍光画像の3次元表示 YouTube:SeeDBで透明化したマウス脳の連続断層蛍光像(深さ約6mm))。従って、SeeDB法と2光子励起顕微鏡を組み合わせると、神経細胞の形態や接続を、ミリメートルスケール、究極的には全脳規模で解析可能であると考えられます。

(3)コネクトーム解析

現在、神経科学分野では、神経細胞の接続様式を網羅的に解析するコネクトーム研究が盛んです。研究チームは、SeeDBがコネクトーム解析にも極めて有用であることを検証しました。

まず研究チームは、脳梁線維を蛍光タンパク質で標識したマウス脳にSeeDB処理を施し、蛍光イメージングを行いました。脳梁線維は左右の大脳半球をつなぐ長い神経線維で、基本的に左右の同じ領野同士を互いにつないでいます。イメージングの結果、大脳皮質II/III層由来の脳梁線維の1本1本を区別して追跡することに成功し、大脳皮質における領野の相対的な位置関係は脳梁線維の束でも保持されていることを見いだしました(図6)。すなわち、左脳の領野間の位置関係は、脳梁線維においても相似形で保持されており、相対的な位置関係を保ちながら右脳側に接続していることになります。この結果から、脳梁線維が正しく配線されるためには、走行の途中で「相似形を維持する」メカニズムが働くことが重要であると考えられました。

次に、研究チームはSeeDBを用いて匂い情報処理の一次中枢である嗅球の神経回路の解析も行いました。匂い情報は、まず鼻腔内にある1,000種類の嗅神経細胞(匂いセンサー)によって検出され、この情報は脳の嗅球へと伝えられます。嗅球では糸球体という構造が匂い情報処理の基本単位になっており、1個の糸球体には1種類の匂いセンサーの情報だけが入力されます。その後、その情報は15個程度の僧帽細胞へと伝えられた後、嗅球内でさまざまな神経細胞とのやりとりを経て演算された後、嗅皮質と呼ばれる高次嗅覚中枢へと伝達されます。しかし、僧帽細胞の嗅球内における詳細な配線様式についてはよく分かっていませんでした。

研究チームは、SeeDBを使って嗅球を透明化し共焦点顕微鏡で3次元画像取得をしたところ、1個の糸球体に接続する15個程度の僧帽細胞の配線様式を一度に丸ごと明らかにすることに成功しました(図7、YouTube:嗅球の単一の糸球体に接続している僧帽細胞の可視化)。そして、同じ糸球体に接続する僧帽細胞の間でも、嗅球内の配線先は実に多様であり、匂い情報の演算、とくに抑制(引き算)回路のつながり方がそれぞれ異なっていることが示唆されました。このように、神経回路の全体的な形態を単純に「見る」コネクトーム研究は、神経回路の機能や情報処理過程の理解にも重要な示唆を与えてくれます。

今後の期待

SeeDBを用いると、脳をはじめとする生体試料を簡便に透明化でき、容易に3次元画像の取得ができます。とりわけ、神経細胞の接続様式を大規模解析するコネクトームのアプローチには有効です。カハールの時代には神経細胞の2次元画像から神経回路の機能に思いを巡らせるよりほかありませんでしたが、今や蛍光顕微鏡技術と透明化技術の進展が相まって、誰でも容易に詳細な3次元画像を手にすることができるようになりました。今後、神経回路のコネクトーム解析や、生物の立体的な発生過程の理解など、「3D生物学」の発展が期待できます。

一方で、顕微鏡技術や膨大な3次元画像データの解析手法についてはまだ発展途上であり、今後の展開が期待されます。

原論文情報

  • Meng-Tsen Ke, Satoshi Fujimoto, Takeshi Imai. “SeeDB: a simple and morphology-preserving optical clearing agent for neuronal circuit reconstruction”. Nature Neuroscience, 2013,doi: 10.1038/nn.3447

発表者

理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター 感覚神経回路形成研究チーム
チームリーダー 今井 猛 (いまい たけし)

お問い合わせ先

発生・再生科学総合研究センター 広報国際化室
大村 朋美(おおむら ともみ)
Tel: 078-306-3076 / Fax: 078-306-3090

報道担当

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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独立行政法人科学技術振興機構 広報課
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産業利用に関するお問い合わせ

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JSTの事業に関すること

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補足説明

  1. 共焦点顕微鏡
    蛍光色素を可視化する蛍光顕微鏡の1つ。共焦点顕微鏡ではピントの合った深度の光だけを検出するため、厚みのあるサンプルの深部でも鮮明な像を得ることができる。深さを少しずつずらしながら画像取得することで、厚みのあるサンプルの3次元蛍光画像を得ることができる。
  2. 2光子励起顕微鏡
    蛍光色素を可視化する蛍光顕微鏡の1つ。特殊な赤外光パルスレーザーを用いることで、ピントの合った深度でだけ蛍光色素を光らせることができるため、鮮明な像を得ることができる。深さを少しずつ変えていくことで3次元蛍光画像を得ることができる。共焦点顕微鏡と比べると、光散乱の影響を受けにくい長波長のレーザーを使うため、より深くまで可視化することができる。
  3. 光散乱
    光の波長と同程度の微粒子によって光の進行方向が四方八方に散らばること。光散乱が大きくなると光が直進できず、像を結ばなくなる(像がボケる)。生体中には、細胞内小器官やさまざまなタンパク質成分、脂質成分など光の進行を邪魔する散乱体が存在し、それらが光散乱の原因となる。光散乱は、散乱体と溶媒(生体においては水)の屈折率の差が大きいほど大きくなる。また、光の波長が長いほど、光散乱は起こりにくい。
  4. 神経トレーサー
    神経細胞は、軸索や樹状突起とよばれるケーブルを配線することで情報のやりとりや演算を行っている。神経トレーサーとは神経細胞の軸索や樹状突起を染め出す色素のこと。近年は蛍光色素がよく用いられる。神経トレーサーを使うと神経細胞の形態や配線の様子を詳しく観察することができる。代表的なものとして、死後脳の染色にも使用できるDiIが挙げられる。神経トレーサーの代わりにGFPなどの蛍光タンパク質を使って神経細胞を可視化することもよく行われるが、その場合は遺伝子改変マウスを作製するか、生きた動物にウイルスベクターで蛍光タンパク質を導入する必要がある。
  5. コネクトーム
    ヒトの脳は約1,000億個の神経細胞が複雑に接続することで成り立っている。神経細胞の接続様式を記述した回路図のことをコネクトームと呼ぶ。遺伝情報全体をゲノムと呼ぶように、脳の接続様式の総体をコネクトームと呼ぶようになった。2000年代に入ってから提唱された言葉だが、現在コネクトームを「解読」する機運は世界的に高まっている。
  6. BABB法
    古くから用いられる生体試料を透明化する手法の1つ。組織の水成分を屈折率の高い有機溶媒に置換することで透明化する。蛍光タンパク質が消失してしまうことから、応用範囲が限られていた。
  7. Scale法
    2011年に理研脳科学総合研究センターの宮脇敦史チームリーダーらによって開発された透明化試薬。タンパク質変性作用のある尿素を主成分とする。蛍光タンパク質の退色が起こらない初めての透明化試薬であるという意味で画期的であった。
  8. CLARITY法
    2013年4月に、米国スタンフォード大学のカール・ダイセロス(Karl Deisseroth)博士らによって開発された生体試料を透明化する手法。生体試料をポリマーで固定したあと、界面活性剤に浸けて長時間電流を流して脂質を取り除くことで透明化する。

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図1 切片を使った神経回路の再構築のイメージ

マウスのような小動物においても、神経細胞はしばしば数mm以上にわたって軸索や樹状突起を伸ばしている。そのため、神経細胞の形態の全貌を知るには、従来多数の切片を作製して2次元画像を取得し、それを後で再構築するという骨の折れる作業が必要だった。

図2 SeeDBを用いた生体試料の透明化

上から順に、マウス胎仔(胎生12日)、新生仔マウス(生後3日)の全脳、大人のマウスの脳スライス(66日齢、厚さ1.5mm)をSeeDBで透明化処理した。従来の透明化試薬では、透明化に伴って生体試料のサイズが膨張・縮小するという問題があったが、SeeDBではそのような問題は生じない。また、従来、脂質に富んだ白質(神経線維が豊富な領域、左下の図で暗く影になっている部分)は透明化が難しいとされていたが、SeeDBを使うと効率よく均一に透明化できる。

左:嗅球僧帽細胞樹状突起(横から見たもの)。中央:嗅球僧帽細胞樹状突起(上から見たもの)。右:嗅神経細胞軸索。

図3 マウス死後脳をDiIで標識し、SeeDBで透明化

神経細胞の形態を標識する際には、蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変動物を作製したり、生きた動物にウイルスベクターを導入させることがよく行われるが、これらが難しい生体試料もある。例えば、ヒトの死後脳に蛍光タンパク質を導入することはできない。死後脳の神経細胞の形態を観察するには、DiIと呼ばれる脂溶性色素がよく用いられてきたが、従来の透明化試薬ではDiIが流出してしまう問題があった。これに対し、SeeDBを使うとDiIで染色した脳も透明化して観察できる。スケールバーは50μm。

図4 SeeDBと2光子顕微鏡を組み合わせた大規模なイメージング

一部の神経細胞が黄色蛍光タンパク質(YFP)で標識された遺伝子改変マウス(Thy1-YFP-H)の脳にSeeDB処理を施し、蛍光イメージングを行った。SeeDBに最適化されたカスタムメイド対物レンズ(作動距離8mm)を用い、2光子励起顕微鏡で画像取得した。一度に取得出来る画像は500×500μmだが、これを貼り合わせてより広範囲の画像にすることができる。マウス脳は約6mmの厚みがあるが、このイメージングシステムを使うと切片を作製することなく、上から下まで可視化が可能となる。

図5 SeeDBと2光子顕微鏡によって取得した蛍光画像の3次元表示

Thy1-YFP-Hマウス脳の蛍光画像を3次元で表示した。神経細胞1つひとつの詳細な立体形状を、大規模に3次元で可視化できる。いずれも厚さ6mmのマウス脳を丸ごと上から撮影したもの。ここで表示している脳断面やブロックの写真は、実際に脳を切って取得したのではなく、丸ごと撮影した後で、コンピューター上で必要な部分を再現した。ちなみに、透明化しなければ深さ数100μmまで(1/10程度)しか見ることができない。

(左図)YouTube:SeeDBと2光子顕微鏡によって取得した蛍光画像の3次元表示
(右図)YouTube:SeeDBで透明化したマウス脳の連続断層蛍光像(深さ約6mm)

図6 脳梁線維を1本1本の解像度で可視化・再構築

子宮内のマウス胎仔に遺伝子導入を行い、左脳の大脳皮質II/III層の錐体細胞に赤色蛍光タンパク質をまばらに発現させた。生後7日目で全脳をホルマリン固定し、その後SeeDBによる透明化処理を行った(左上)。2光子励起顕微鏡を用いた画像を多数貼り合わせることにより、脳梁線維1本1本の走行の様子を明らかにできた(右上)。得られた3次元画像から、左脳から出発した脳梁線維は、もともとの相対的な位置関係を保ちながら正中線を通過し、右脳側へと到達することが分かった(右下)。すなわち、脳梁線維は出発点から終着点まで、金太郎飴のように位置関係が相似形で保たれているといえる。
スケールバーは500μm

図7 匂い情報の一次中枢である嗅球の神経回路の可視化

同じ糸球体に接続する僧帽細胞の間で嗅球内の配線が似通っているのか、多様性に富んでいるのかを明らかにするため、本研究では単一の糸球体(上図赤色部分)に神経トレーサーを注入し、接続している僧帽細胞を全て蛍光標識した。その後、SeeDBによる透明化を行って共焦点顕微鏡による3次元画像取得を行い、嗅球内の配線の様子を一度に明らかにした。また、今回用いた遺伝子改変マウス(OMP-GFP)は、全ての糸球体を緑色蛍光タンパク質で標識している(上図に緑色で表示)。この解析の結果、単一の糸球体から染め出された13個の僧帽細胞は実に多様な配線様式を示すことが明らかとなった(上図に異なる色で表示)。従って、同じ糸球体から情報を受け取る僧帽細胞同士でも配線様式は一様ではなく、異なる神経細胞(主に顆粒細胞)に接続して抑制(引き算)を受け(下図)、異なる情報を高次嗅覚領域に伝達しているものと考えられる。
スケールバーは500μm。

(上図)YouTube:嗅球の単一の糸球体に接続している僧帽細胞の可視化

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