広報活動

Print

2013年8月7日

理化学研究所

社会性や情動に関する行動を制御する因子をマウスで発見

-不安障害や気分障害の発症メカニズム解明の手掛かりに-

モノアミンオキシターゼAタンパク質の量と精神疾患の関係

気分や、怒り・恐れ・喜び・悲しみなどといった突発的な感情の動きは、脳内で働く「モノアミン」という神経伝達物質によって調節されています。モノアミンには注意力や衝動性などに関わるノルアドレナリンや、精神を安定させる働きがあるセロトニンなどが含まれます。これらの量が適切に調整されていれば、気分も感情の動きも正常に保たれます。ノルアドレナリンやセロトニンを分解して量の調節を行うのはモノアミンオキシターゼという酵素です。最近の研究では、その酵素の1つである「モノアミンオキシターゼA(MAO-A)」の脳内量が、突然の感情の動きや攻撃性などに関連するという結果が報告されています。しかし、MAO-Aの量を制御するメカニズムはいまだに分っていません。

理研の研究チームは2008年に、タンパク質を修飾してその分解を促す膜タンパク質「RINES」を発見しています。このRINESの役割を明らかにするために、RINESを欠損したマウスを作製したところ、外見上は正常なマウスと変わらないのですが、行動に異常が見られました。そこで、RINES欠損マウスに対していくつか行動実験を行った結果、不安の高まりなどの感情の動きの異常や、攻撃性などの社会性に関連する行動の異常を確認しました。また、不快感をもたらす電気刺激や水泳のストレスに対しての回避行動などが低下していました。詳細に調べた結果、不快な刺激後のRINES欠損マウスの脳ではモノアミンの量が低下し、一方でMAO-Aの酵素活性が高くなっていました。このことから、MAO-Aの分解にRINESが関係している可能性が示されました。ヒトとマウスの培養細胞を用いてRINESの関与を調べたところ、RINESはMAO-Aに結合して分解を促進していることが分りました。

マウスを用いて、脳内のRINESがMAO-Aの量を制御することで、社会性や感情の動きに関連した行動の制御のメカニズムに関わっていることが明らかになりました。今後、ヒトにおいてもこうした関連性が解明されれば、突発的な感情の動きや社会性障害を伴う神経疾患分野で、RINESを標的にした抗不安薬などの創薬に向けた動きが活発になると期待できます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 行動発達障害研究チーム
チームリーダー 有賀 純