広報活動

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2013年8月16日

独立行政法人理化学研究所
公益財団法人高輝度光科学研究センター

電子ビームをオーダーメードで加速

-XFELマルチビームライン運転に向けた新技術-

今回考案したオーダーメード電子ビーム加速

理研が保有するX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」が発するレーザー光は、既存の放射光に比べ100億倍以上明るく、原子や分子の瞬間的な動きが観察できます。2012年3月から供用を開始し、物理学、化学、生物学などさまざまな分野の実験に使われ始めています。

今まで不可能と考えられていた実験が行えるようになるので、今後、SACLAを使った実験が増えることが予想されています。そのため、増加する利用実験に対応してビームライン増設を計画しています。ただ、それぞれのビームラインごとに行われる実験は独立していて、使用するレーザー光の波長に対して電子ビームのエネルギーをどのように変化させるかが難しく、増設に向けて大きなハードルになっていました。

研究グループはこの問題を、電子ビームを加速する「線形加速器」の加速管ユニットの動作周波数を変えることで解決しようと試みました。複数のビームラインへ供給する電子ビームのエネルギーを電子バンチ(電子のかたまり)ごとに制御し、すべてのビームラインに最適な条件でレーザーを発振させる方法です。SACLAで実証実験を行ったところ、電子ビームの安定性や品質を損なうことなく、10Hz(ヘルツ)の電子バンチを異なる2つの目標エネルギーまでに加速し、レーザー光発生装置であるアンジュレーターに通して、異なるエネルギーでレーザーを発振させることに成功しました。

今回の実験成功により、多数のビームラインに最適なエネルギーをもった電子ビームを供給でき、全てのビームラインで強度の強いレーザー光の利用が可能になります。複数のビームラインを同じ建屋内に並べて配置することが可能となることから、今後、計画されているXFEL施設の設計にも大きなインパクトを与えるものと予想できます。また、この方法は、隣接するX線放射光施設「SPring-8」の放射光を100倍明るくする次期計画において、SACLAからSPring-8蓄積リングへの「トップアップ運転(電子を継ぎ足し入射し蓄積電流を通常運転時の上限いっぱいまでに維持する運転)」のためのビーム入射にも欠かせない技術となります。