広報活動

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2013年9月9日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学

新しい高密度・低消費電力デバイスの実現に前進

-電子スピンの渦「スキルミオン」の制御法を理論的に解明-

スキルミオン生成のシミュレーション結果図

スキルミオン生成のシミュレーション結果

「スキルミオン」をご存知ですか―。宇宙・素粒子の研究者トニー・スキルムがビッグバン後の素粒子の状態を記述するのに用いたそうです。これが固体の中で実現すると、一言でいえば「電子スピンが渦状に並んだナノサイズの磁気構造」となりますが、なかなかイメージがわきませんね。でも、このスキルミオン、次世代の磁気メモリー開発競争の中で、有力候補としてたいへん注目されています。これまで、半導体技術は集積回路の微細化によって進歩してきましたが、この技術の延長線上では10~20年後に限界がくると言われています。そこで、シリコンに細線を描く-という技術とは異なる原理に基づき、ナノサイズでかつ小さな電流密度で駆動できる磁気構造が求められています。その1つとしてスキルミオンが挙がっているというわけです。スキルミオンも10年後はIGZO並み?の認知度にはなっているかもしれません。

スキルミオンは、これまでに“制限されていない空間”ではきわめて小さな電流密度で駆動できることが分かっていました。しかし、なぜ電流密度が小さくても動くのかの理由は分かっていませんでした。回路などの“制限された空間”では、全く異なった特性が現れる可能性があり、その理由が分らないと動的変化を予想することができずデバイスとして使えません。そこで、理研の研究者をはじめとする共同研究グループは、シミュレーションを使って「制限された空間内でのスキルミオンの挙動の解明」に取り組みました。

共同研究グループは、磁気構造の時間変化を記述する微分方程式を大規模な数値計算で解くことにより、スキルミオンが、回路のような制限された空間の中で、どのように動くかを理論的に突き止めようとしました。その結果、狭い空間に閉じ込められたときのスキルミオンの動きは、広い空間での動きとは全く異なり、摩擦力や不純物、欠陥などの影響を強く受けること、さらに回路の端では一定以上の電流を流すとスキルミオンが消滅することが分りました。また、これまで難しいとされていたスキルミオンの生成を、微小な切れ込み(狭窄構造)を入れて電流を流すというごくシンプルな方法で実現できることを示しました。

今回の研究成果は、スキルミオンを応用したデバイスを設計する際に基盤となる指針を理論的に提供し、スキルミオンメモリーや論理回路設計への新しい道を開きます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関理論研究グループ
グループディレクター 永長 直人 (ながおさ なおと)