広報活動

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2013年9月12日

独立行政法人理化学研究所
公立大学法人横浜市立大学
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター

肺がんのリスクと予後を予測する新規バイオマーカーの発見

NRF2遺伝子の一塩基多型が術後生存率と女性非喫煙者の発症リスクに関連-

NRF2遺伝子のSNP(-617C>A)を持つ肺がん患者の術後生存率

NRF2遺伝子のSNP(-617C>A)を持つ肺がん患者の術後生存率

肺がんによる死亡率は近年増加傾向を示し、日本でも全てのがんによる死亡者数の19.7%を占めるなど、男女ともにがん死の中で最も多い死因となっています。肺がんは一般的に喫煙との関係が大きいとされています。一方、肺がんの一種である肺腺がんは、非喫煙者の女性に発生する肺がんの主流と見られていますが、その原因はよく分っていません。そこで、理研、横浜市立大学、神奈川県立がんセンターの研究者による共同研究グループは、喫煙などによる肺がんリスクの個人差や性差に関わる遺伝子の解明に挑みました。

研究グループは、細胞の防御に関わる「NRF2遺伝子」に着目しました。NRF2遺伝子がコードする転写因子NRF2は、抗酸化遺伝子の発現を制御するなど細胞の防御に重要な役割を果たすだけでなく、がん細胞の増殖や抗がん剤への抵抗性にも関係することが知られています。また、過去の研究から、NRF2遺伝子の一塩基多型(SNP)がNRF2遺伝子の発現に影響を及ぼし、急性肺障害のリスクと関係することが示唆されています。

共同研究グループは、387人の肺がん患者の血液試料からゲノムDNAを抽出し、遺伝子多型解析を行いました。NRF2遺伝子のSNPと肺がん患者の性別、年齢、喫煙歴、肺がんの種類と進行度、生存期間などの治療後の臨床データとの関係を調べたところ、SNPホモ接合体(対立遺伝子の両方が同じSNPを持つ)を持つ肺がん患者は、肺がんの手術後の5年生存率が良好であることが分りました。また、SNPホモ接合体を持つ女性非喫煙者では肺腺がんになるリスクが男性喫煙者より高いことも分かりました。

肺がんの死亡率が高い理由の1つに、発見時にすでにがんが進行していることが多いことが挙げられます。今回、NRF2遺伝子のSNPと肺がん患者のがん進行度、および治療後の生存率との関係が示されたことにより、このSNPが肺がんの予後と女性非喫煙者の肺がんリスクを予測するための有用なバイオマーカーになると考えられます。また、今回の成果は肺がん患者の個別化医療の新しいアプローチになると期待できます。