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2013年9月14日

独立行政法人理化学研究所
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クォークから中性子星の構造解明へ道筋

-中性子星の最大質量とクォーク質量の関係が明らかに-

クォーク質量の変化に伴う中性子星の最大質量と半径

クォーク質量の変化に伴う中性子星の最大質量と半径

「中性子星」は、質量の大きな恒星の進化の最終段階でおこる超新星爆発で生まれます。銀河系内でも、すでに2000個近く発見されています。太陽とほぼ同じ重さですが、半径が、太陽が約70万kmなのに対しわずか10kmと極端に小さく、したがって中心密度が1cm3あたり1兆kgという超高密度な星です。角砂糖1個くらいの大きさで1兆kgなんてとても想像がつきませんね。中性子星の表面は原子核や電子でできていて、内部に進むにつれて原子核が融けて一様な物質になっているとされています。しかし、その内部構造は謎のままです。

理研の研究者を中心とした共同研究チーム「HAL QCD Collaboration」は、中性子星の内部構造の謎解きに果敢に挑戦しました。そのためには、中性子星の内部の超高密度状態を表す「状態方程式」を導き出す必要があります。まず研究チームは、これまで蓄積してきた、物質の究極の構成要素である「クォーク」同士に働く強い力の数値データを、スーパーコンピュータを使った大規模な数値シミュレーションで統合し、陽子や中性子(核子)の間に働く「核力」を求めました。次に、その計算結果と、強く相互作用する核子が集合したシステムを取り扱う「ブルックナー理論」を用い、超高密度物質のエネルギーと圧力との関係を示す状態方程式を世界で初めて理論的に導き出しました。さらに、この状態方程式と一般相対性理論を使って、中性子星の構造を計算します。その結果、数値シミュレーション上でクォーク質量を仮想的に変化させた時、中性子星の質量と半径の関係や、強い重力場でブラックホールになる寸前の中性子星の性質などが、どのように変わるかを求めることに成功しました。

クォークの運動を支配する理論としては南部陽一郎博士が提唱した「量子色力学」があります。今回の中性子星の構造解明も出発点は量子色力学でした。しかし、そこから直接、状態方程式を導き出すのは不可能です。そこで研究チームは、クォークの質量を仮想的に変化させることができ、実験では得られない豊富な情報をシミュレーションで引き出すことができる「格子ゲージ理論」を使いました。これによって陽子や中性子の質量の精密な計算が可能になります。特に、研究チームは同理論を用いて陽子や中性子の間に働く核力の性質を解明する方法を考案しており、これらが今回の状態方程式の理論的導出に大きな役割を果たしています。

今回の成果を、今後、X線や電波による中性子の観測や、重力波を用いた中性子星合体現象の観測データと突き合わせることで、超高密度な物質の構造解明につながると期待できます。

独立行政法人理化学研究所
仁科加速器研究センター 初田量子ハドロン物理学研究室
研究員 土井 琢身 (どい たくみ)