広報活動

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2013年10月9日

理化学研究所

植物病害応答の新規制御メカニズムを発見

-代替ポリアデニル化によって病害応答転写因子の活性を制御-

ERF遺伝子を転写したmRNAの図

ERF遺伝子を転写したmRNA

日本では少子化による人口減少が懸念されていますが、世界規模で見ると現在の人口が約70億人で、これが30年後には90億人になると予想されています。人口が増えれば必然的に起きるのが食糧需給のアンバランス。気候変動による農耕地の砂漠化現象も進み、食糧問題の深刻さが顕在化しています。さて、食糧の確保や安全を脅かす要因の1つに挙げられているのが「植物病害」です。このため、病害から植物を保護する戦略の確立が各国で喫緊の課題になっています。

植物は病原体に感染すると、数千の病害応答遺伝子群を発現させて耐病性を発揮します。病原体の把握と、これに対応する病害遺伝子群の制御システムが解明されれば、より効果的な病害への備えができます。最近、RNAに結合したタンパク質が耐病性に関わるという研究報告があり、RNAレベルでの制御がシステムの1つであるとされています。しかし、その詳細なメカニズムはまだ解明できていません。

理研の研究者を中心とした国際共同研究グループは、実験モデル植物のシロイヌナズナを用いて、植物病害応答のRNAレベルの制御メカニズムの解明に取り組みました。DNA配列から転写と呼ばれる過程を経て作られるメッセンジャーRNA (mRNA)は、RNA結合タンパク質の制御を受けてタンパク質の合成過程に進みます。なかでもmRNA配列の末端にアデニル鎖を結合するポリアデニル化は、タンパク質の合成に重要です。

そこで、共同研究グループは、独自に開発したマイクロアレイ(遺伝子発現解析に使われる分析器具)を使って、病原体に感染した時に発現する遺伝子を詳細に調べました。その結果、ERF4遺伝子を転写したmRNAのポリアデニル化される位置が後方に変化(代替ポリアデニル化)し、さらにスプライシングの位置も変化(代替スプライシング化)して短いmRNAができることが分りました。これにより、ERF4タンパク質の転写抑制領域が失われ、病害応答遺伝子群が発現することが明らかになりました。また、代替ポリアデニル化が開花期の調節に関わるFPAタンパク質によって制御されていることも分かりました。

今回の成果により、持続的で環境にやさしい新たな耐病性植物を開発する端著が見つかりました。また、植物が病原体に感染すると開花時期が早まってしまいますが、開花時期の調節に関わるFPA

遺伝子を改変することでコントロールが可能になるものと期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ
グループディレクター 白須 賢 (しらす けん)