広報活動

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2013年10月10日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学

重いカルシウムで新しい「魔法数」34を発見

-原子核物理学の夢の1つ「安定原子核の島」到達の手掛かりに-

核図表と原子核の魔法数の図

核図表と原子核の魔法数

電子とともに原子を構成しているのが原子核です。原子核は陽子と中性子からなる「核子」という微粒子のかたまりですが、核子の数によって原子核の性質が変化します。原子核がとくに安定となる核子の数のことを「魔法数」と呼び、これまでに2、8、20、28、50、82、126が知られています。1949年に米・独の物理学者が魔法数を提起し、この成果で1963年にノーベル賞を受賞しました。以来、魔法数は全ての原子核で不変のものとされてきました。

ところが、2000年に理研の研究グループが、陽子に比べ中性子の数が多い「不安定原子核」の領域では、8、20、28の魔法数が消え、新たな魔法数6、16が出現することを発見し、これまでの“常識”を覆しました。また、2001年には、東京大学の研究グループが、陽子数が魔法数20のカルシウム同位体で中性子数34が魔法数になる、という理論的な予言をしています。ただ、実験的な検証が難しく解決されないままになっていました。

理研の研究者を中心とした国際共同研究グループは、魔法数34の実証に挑みました。世界最高性能の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を使い、カルシウム-54(54Ca)の中性子数34が魔法数かどうかを調べました。超伝導リングサイクロトロン、超伝導RIビーム生成分離装置などRIBFが擁する装置を駆使して、スカンジウム-55(55Sc)とチタン-56(56Ti)をビームとして取り出し、ベリリウムに照射して54Caを生成しました。この励起準位(原子核のエネルギーが最も低い基底状態に比べ高い準位)のエネルギー値を測定したところ、魔法数でない24、26、30の原子核のエネルギー値に比べて大きいという結果がでました。また54Caの励起準位のエネルギー値を理論モデルとして使って計算したところ、殻が大きく変化したことから、中性子数34が魔法数であることが分りました。

54Caの陽子数20は魔法数です。つまり、54Caは陽子数、中性子数とも魔法数ということになり、こうした原子核は他の原子核にはない特別な性質を持つことが期待されます。原子物理学の夢のひとつである「安定原子核の島(安定した原子核の存在領域)」への到達を目指した研究では、ウランより重い超重元素をつくる必要があります。このため、54Caと他の原子核を融合させる手法が有効になると考えられます。今回の成果は、魔法数が現れる規則性や不安定原子核を含む原子核の成り立ちの理解に向けた大きな一歩になります。

国立大学法人東京大学
原子核科学研究センター
特任研究員 David Steppenbeck (デービッド ステッペンベック)
(当時 独立行政法人理化学研究所 仁科加速器研究センター 櫻井RI物理研究室 国際特別研究員)

独立行政法人理化学研究所
仁科加速器研究センター 櫻井RI物理研究室
協力研究員 武内 聡 (たけうち さとし)