広報活動

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2013年10月25日

理化学研究所

世界最高出力の孤立アト秒パルスレーザーを開発

-孤立アト秒パルスの高出力化の道を開くことに成功-

究極の高速運動とされているものに「原子内の電子の動き」があります。例えば水素原子内での電子の周回運動時間は150アト秒といわれています。1アト秒は100京分の1秒(10-18秒)ですから、いかに短い時間であるかお分りになるでしょう。「いや、とても想像がつかない」というのが本音かもしれません。私たちが日常、なんとか意識できるのはせいぜい1,000分の1秒、陸上100m競争での1cm弱の差、それも写真判定によるものくらいですから。

超高速現象を観察するためには、その現場を明るく照らす超高速のストロボが必要です。それが「アト秒パルスレーザー」と呼ばれる、パルス幅(ストロボが瞬く時間)が極端に短いレーザーです。パルス幅が短ければ短いほどより速い現象を観察することができます。究極の高速運動の観察を目指して、世界の多くの研究者がアト秒パルスの時間幅を短縮しようとしのぎを削ってきました。しかし、この10年間ほどで開発されたアト秒パルスの出力は低く、様々なことに利用するのが難しい状況が続いていました。

理研の研究者らのグループは、アト秒の時間幅を保ちながら、高強度(出力の高い)且つ時間的に孤立(単一な)したアト秒パルスを発生できる手法の開発を目指しました。これは時間的に一度だけとても強く光る、強力なアト秒パルスが得られる手法です。研究グループは、2010年に2つの波長を混ぜ合わせた2波長合成レーザーを用い、簡易に単一アト秒パルスを作り出す方法を開発しています。今回の開発では、この2波長合成レーザーを励起光として使い、さらに励起レーザーを緩やかにアト秒パルス発生媒質(キセノンガス)に集光する独自技術を組み合わせました。その結果、極端紫外光(XUV)領域で、パルス幅500アト秒、瞬間出力が世界最高の2.6ギガワットという非常に強いアト秒パルスの発生に成功しました。従来法と比較すると100倍以上の高出力化を実現したことになります。例えば、これまで実現されたアト秒パルスレーザーの強さをロウソクの光に例えると、今回実現されたアト秒パルスの強さは 100 W 電球くらいになります。さらに、従来は10万分の1程度だった励起レーザー光からアト秒パルスへの変換効率も10倍以上改善しました。

この成果は、今後、XUVよりさらに波長の短い、軟X線域からX線域の高強度アト秒パルスレーザーの開発する時の指針になります。そして、電子同士の超高速相互作用やアト秒領域での非線形光学研究などの未知の領域の開拓につながります。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ アト秒科学研究チーム
専任研究員 高橋 栄治 (たかはし えいじ)