広報活動

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2013年11月5日

理化学研究所

ゴルジ体内のタンパク質輸送を制御する分子機構の一端を解明

-新開発の顕微鏡システムによりRab GTPアーゼの転換機構を証明-

Rab GAP カスケードによるYpt6からYpt32への転換

皆さんは、高度に自動化された配送センターをご覧になったことがありますか。コンピューター制御の大きな立体自動倉庫を持ち、スタッカクレーンで素早く入出庫される様子は壮観です。消費者に正確かつ迅速に届けることができるように、ロジステックスの仕組みも進化を続けています。

ヒトや酵母を含む真核生物の基本単位である細胞内にも、ロジステックシステムが存在します。細胞内には細胞小器官と呼ばれるさまざまな構造体があり、膜構造による輸送経路(細胞内膜交通)によって相互にタンパク質を輸送しています。その輸送を制御しているのが「Rab GTPアーゼ」と呼ばれるタンパク質です。この中でゴルジ体は、ちょうど配送センターの役割を担っていて、輸送すべき積み荷のタンパク質が正確に運ばれるために、行き先を正しく仕分けしています。ゴルジ体は平らな袋(槽)が積み重なった構造で、それぞれの膜の成分や存在する酵素が異なります。例えば、酵母のゴルジ体では4つのRab GTPアーゼ(Ypt1、Ypt6、Ypt31、Ypt32)が存在し、膜交通を制御していますが、ゴルジ体の各槽の膜上でどのように制御されているかは、未解明でした。

理研の研究チームは、Rab GTPアーゼの制御機構を解明するため、独自開発の蛍光顕微鏡「高感度共焦点顕微鏡システム」を使用し、細胞のライブイメージングによって酵母のゴルジ体に存在するRab GTPアーゼを可視化し、その挙動を調べました。その結果、ゴルジ体の成熟に伴ってRab GTPアーゼの1つで、エンドソームからゴルジ体へのタンパク質輸送を担う「Ypt6」がゴルジ体の膜上から消え、逆に、積み荷タンパク質を仕分け・発送する「トランス槽」という袋に存在するRab GTPアーゼ「Ypt32」が膜上に蓄積していました。この結果、Ypt6とYpt32はゴルジ体の各膜上で一方が現れると一方が消えるという“相互排他的”に存在していることが分りました。これによってそれぞれが制御する膜交通が転換していることになります。こうした結果は、近年提唱されている「Rab GAPカスケード」と呼ばれるRab GTPアーゼの転換制御機構が関わっていることを示しています。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ ライブセル分子イメージング研究チーム
研究員 須田 恭之 (すだ やすゆき)
チームリーダー 中野 明彦 (なかの あきひこ)