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2013年11月14日

理化学研究所

新星爆発の瞬間の観測に成功

-ISSに搭載した全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」が「火の玉」をとらえた-

MAXIによる撮像画像と想像図

重量級の白色矮星の爆発の瞬間を捉えたMAXIによる撮像画像(左)と想像図(右)

太陽のような恒星は、水素を燃料とした核融合反応によって輝いています。恒星は活動末期で内部の燃料を使い果たすと、白色矮星(わいせい)と呼ばれる小さな暗い天体に変化します。別の恒星とペアになった連星での白色矮星では、恒星から供給された水素ガスが表面に蓄積し、これが白色矮星の表面重力によって高温・高圧となり、突然爆発的な核融合反応を起こします。これを「新星爆発」といいます。爆発による放出物は、数日間のうちに太陽の半径の約100倍まで膨張します。この放出物は可視光線を放射するため膨張とともに急激に明るくなり、目に見える新星として発見されます。似たような天体現象に「超新星爆発」があります。新星爆発が白色矮星表面だけで起きる現象なのに対し、超新星爆発は白色矮星や恒星自体が爆発で吹き飛んでしまう現象で、この2つは異なる現象です。

通常の質量(重さ)の白色矮星上で発生する新星爆発では、爆発による放出物が膨張する前の短時間に紫外線の閃光が放出されると予測されています。これを新星爆発の「火の玉フェイズ」と呼んでいます。しかし、新星爆発がいつ、どこで発生するかを予測することは不可能で、いまだに観測されていません。一方、質量が大きな白色矮星では、表面重力が強いため少量の堆積ガスで点火して爆発します。爆発の放出物が少ないので表面近くの高温領域がむき出しになり、紫外線より波長の短い軟X線の閃光を放出すると予測されています。こちらの場合も、質量が大きな白色矮星上で発生する新星爆発が少ないことや軟X線の観測装置がなかったこともあって、観測されていません。つまり、火の玉フェイズはこれまで全く観測されたことがなかったわけです。

理研の研究者を中心とする共同研究グループは、新星爆発の瞬間に重い白色矮星を包み込んだ「火の玉」を観測することに初めて成功しました。国際宇宙ステーションに搭載した全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」を用い、小マゼラン星雲の東端に、通常の新星爆発に比べ約100倍という極めて明るい軟X線の閃光を発する突発天体を発見しました。観測データを精査した結果、この軟X線の閃光は、新星爆発の点火後約1時間の間に星全体を包み込んだ「火の玉」であることが明らかになりました。さらにMAXIに搭載された軟X線分光観測装置によって閃光の中に明るいネオンのX線輝線を検出しました。これは、この白色矮星が酸素とネオンで構成された重い白色矮星であることを示しています。

発見した突発天体が、通常の新星爆発の100倍の明るさに達したこと、ネオンのX線輝線放射を含んでいたことは、これまでの新星爆発の理論に修正を迫ることになります。また、この白色矮星の質量が白色矮星の最大質量とされた限界に近い値、あるいはその値を超えている可能性があり、この点も天文学に広く影響を与えることになりそうです。

理化学研究所
グローバル研究クラスタ 宇宙観測実験連携研究グループ MAXIチーム
協力研究員 森井 幹雄 (もりい みきお)
専任研究員 三原 建弘 (みはら たてひろ)