広報活動

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2013年12月4日

独立行政法人理化学研究所
公益財団法人高輝度光科学研究センター

2つのX線波長で同時レーザー発振に成功

-新しい実験手法を可能にする新光源-

概念図

SACLA 2色XFELの概念図

バレーボールで“一人時間差攻撃”というのがあります。ジャンプのタイミングを遅らせて、ブロッカーの手が下がり始めた時を狙ってジャンプし、ボールを打ち込みます。決まった時は鮮やかなのですが、トスを上げるほうと打つほうの信頼関係がないと、間の抜けたザンネンなプレーになってしまいます。1秒にも満たない時間での瞬間的なひらめきで決まるプレーは、バレー観戦の醍醐味のひとつです。原子や分子の超高速の挙動を観察できる理研のX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」でも、瞬間の単位は大きく異なりますが、“時間差”を使った「時分割測定」によって、これまで見ることができなかった現象の時間変化を非常に精度よく捉えられるようにする研究が進んでいます。

原子や分子の瞬間的な動きを観察するには、カメラのストロボのようにコマ送り(時分割)で見ることが必要です。時分割測定には、反応を引き起こす「ポンプ光」と、時間差をつけてそれを観測する「プローブ光」の2つの光パルスが必要です。従来は、外部レーザーの可視光パルスとXFELのX線パルスの2つの光パルスを使って実験を行ってきました。しかし、一方の光が可視光だとX線との波長差が大きく、観察できる反応や現象が制約されるだけでなく、2つのパルス間の時間差の精度が低いために、実験上の大きな制約になっていました。

そこで、理研の研究者を中心とした共同研究グループは、異なる波長の2つのX線光パルスを同じ電子ビームから発生させる「2色XFEL」の実現を目指しました。XFELの波長は、電子ビームのエネルギーや磁場を変化させることで選べます。共同研究グループは、電子ビームを迂回させて遅延させる減速用のコーナー(シケイン)をアンジェレータの途中に設置し、コーナーの上流・下流の磁場を独立に変えることによって、2つの波長でレーザーを発振させることに成功しました。電子ビームはシケインで迂回するため、迂回量を制御することで1つめの光パルスと2つめの光パルスの時間差を高精度で変えることができます。また、2色XFELでは、2つの光パルスを異なる方向へ放射することも可能です。シケイン下流の電子ビーム軌道を変えることによって2つめの光軸を変え、2つの光を空間的に分離して発生します。

今回の成果により、これまで見られなかった現象の時間変化を精度よく観察することが可能になります。小型X線レーザー発振装置の開発につながる原理の検証や、これまで1つの波長で測定されていたタンパク質の構造解析を複数の波長で同時に行うなど、新しい実験手法の開拓が期待できます。