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2013年12月12日

理化学研究所

常温有機強誘電体の分極反転を阻害する要因を発見

-分極反転を不完全にしているのは特定の向きを持った強誘電ドメイン壁-

熱処理後の電気分極反転、電気分極ドメイン分布の関係図

図 熱処理後の電気分極反転、電気分極ドメイン分布の関係

強誘電体という物質があります。外から電圧を加えなくても電荷の偏り(これを電気分極といいます)を起こしている物質です。電圧を加えると、その電圧の向きに応じて電気分極の向きを反転できるため、強誘電体メモリー(FeRAM)に使われています。FeRAMの場合は、プラス/マイナスの自発的な電気分極を「1」と「0」に対応させておき、書き込み・読み出し時に電圧を加えて分極の反転による記憶動作を行います。強誘電体の中でも有機強誘電体は、有毒な鉛やレアメタルを含まず、環境への負荷が少ないため、電子材料として有望視されています。ただ、電圧による電気分極反転が不完全なことも多く、デバイスの性能劣化や動作不良につながるため、その要因の解明が求められていました。

理研の研究者らによる共同研究グループは、新開発の常温有機強誘電体を用いて、電圧を加えた時の電気分極の反転過程を測定し、その要因を探りました。実際に測定したこの常温有機強誘電体の電気分極反転量は、シミュレーションで予測した値の7分の1以下でした。この結果は、何かが分極反転を妨げていることと、もし、それを排除することができれば大きな改善がはかれる可能性があることを示していました。

そこで、圧電効果による変位を利用することで電気分極の向きを画像化できる「ピエゾ応答力顕微鏡」を用いて、分極反転過程を可視化してみました。得られた画像を解析すると、電気分極と平行でない向きを持った強誘電領域の“壁”「対向分極ドメイン壁」が存在し、電気分極反転を妨害していることが分りました。この壁を熱処理で取り除くことができるという理論予想があり、これを検証するため、実際に熱処理を行ったところ、電気分極量が5倍に増大しました。

今回の研究で、常温有機強誘電体の電気分極反転を妨げている要因が、特定の向きを持った対向分極ドメイン壁にあることが分りました。同時に、これを熱処理で取り除くことで反転可能な電気分極量を大幅に増大できることを示しました。これらの成果は、有機強誘電体材料や、それを用いたデバイス創出を推進するうえで重要な知見になると期待できます。また、熱処理工程を最適化して、材料が持つポテンシャルを最大限引き出す可能性も提起しました。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 統合物性科学研究プログラム 動的創発物性研究ユニット
ユニットリーダー 賀川 史敬 (かがわ ふみたか)