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2013年12月19日

理化学研究所

免疫履歴がその場で分かるマイクロアレイ診断システムを開発

-「どんな感染症に免疫ができているか」を全自動でわずか15分で診断-

写真

ウイルス・マイクロアレイ診断システム(左)とチップカセット(右)

自分がどんな免疫を獲得しているかは意外に分っていないものです。乳児や幼児のときに受けた接種は何なのかは覚えていないし、大人になって受けたインフルエンザのワクチンの種類もAなのかBなのかCなのか?さらには亜型というのもあるらしく、どうもはっきりしない。できるだけ簡単に分かる方法があれば…と思っておられる方も多いはずです。

ヒトの血液中にある多くの感染症ウイルスに対する種類や量のことを抗体価といい、これを調べることによって個人個人が獲得した免疫履歴が分ります。免疫履歴を調べるには、通常、採取した血液を検査センターに送り、はしか、風疹などの免疫項目ごとに獲得免疫の確認依頼をします。ところが、この結果を得るまでに、通常5日間ほどを要していました。そこで、理研の研究者らを中心とした研究チームは、医療の現場で短時間かつ簡単に抗体価を調べることができ、個人の免疫履歴がその場で分る診断システムの開発に取り組みました。

研究チームは、DNAチップにも使われている「マイクロアレイ技術」を応用することにしました。この技術は、ごく微量の水溶液を基板上の一定の場所に固定化する技術ですが、DNAより化学的に複雑なタンパク質やウイルスを基板に固定化することは難しく、実用化されていませんでした。研究チームはこれまでに、生体由来の物質など、有機化合物なら何でも基板に固定化できる手法を開発しています。これは、光(紫外光)に反応する物質(ポリマー)を有機物と混ぜ、基板に載せて光を当て固定化する手法ですが、ウイルスを基板に安定的に固定化するにはポリマーの光反応性をさらに高めることが必要でした。

このため、フッ素化アジドフェニルという化合物を加えた新しいポリマーを開発しました。基板上にこのポリマーの薄膜をつくり、ウイルスを含む試料液をスポットして紫外光で照射した結果、ウイルスの固定化に成功しました。作成したマイクロアレイチップを使い、完全自動で免疫獲得の履歴を測定できる「ウイルス・マイクロアレイ診断システム」を開発しました。スイッチを押すだけで、反応、洗浄、検出、分析という一連の行程を自動で行えます。血液中に抗体があれば結合して発光し、発光像をCCDカメラで撮影免疫の有無を判定します。このシステムにより、数滴の血液を用い、わずか15分という短時間で獲得免疫の測定が可能になりました。

老人福祉施設や教育現場などでの集団感染の予防や、妊娠前の女性に対するやさしい検査、インフルエンザ予防接種ワクチンの免疫獲得の確認、海外渡航の際のワクチン予防接種の必要性の判断などに役立ちます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 超分子機能化学部門 創発生体工学材料研究チーム
チームリーダー 伊藤 嘉浩 (いとう よしひろ)