広報活動

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2014年1月28日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学
独立行政法人物質・材料研究機構

スキルミオン分子の生成と低電流密度での駆動に成功

-磁気輸送特性、高密度・低消費電力性を高める磁性材料-

スキルミオンとスキルミオン分子の図

スキルミオンとスキルミオン分子

a:スキルミオン/b:スキルミオン分子の模式図/c:強磁性体薄膜中で観察されたスキルミオン分子

物質中の電子スピンの向きを磁気情報として利用する磁気メモリ素子は、高速な情報の読み書きができる素子として盛んに研究されてきています。しかし、電流で強磁性体中の磁壁(磁化の向きがそろった領域である“磁区”が隣り合う境界)を操作する素子であり、1平方メートルあたり約10億アンペアという大きな電流密度を必要とし、消費電力が大きいことがネックでした。このため、より小さな電流密度で駆動できる材料や手法の開発が待たされています。

そこで、注目されているのは電子スピンが渦状に並んだ磁気構造体「スキルミオン」です。スキルミオン結晶に電流を流すと、スキルミオン中を通過する伝導電子にスキルミオンから磁場が加わり、通常のホール効果に加え新たに起電力が生じるトポロジカルホール効果などの電磁気現象が現れたり、伝導電子のスピンの向きが変わったりします。スキルミオンは結晶中の欠陥などに捕獲されにくい性質があるため、強磁性磁壁に比べ約10万分の1の小さな電流密度で駆動できます。また、電子スピンが渦巻状に整列してスキルミオン構造をとるとトポロジカルチャージが生じます。1個のスキルミオンはトポロジカルチャージ「1」をもち、これが1ビットの情報量に相当します。トポロジカルチャージが増えれば、スルミオン中を通過する伝導電子に与える有効磁場が強まりますが、より高いトポロジカルチャージをもたらすスキルミオンについては理論的には予測されていたものの、これまで実測されたことはありませんでした。

理研の研究者中心とする共同研究グループは、トポロジカルチャージ「2」を持つスキルミオンを生成し、強磁性体より小さな電流密度で駆動させようと試みました。磁化の方向が結晶軸に沿ってそろう傾向を持つ強磁性体である層状マンガン酸化物「La1+2xSr2-2xMn2O7」を作製し、その薄膜に磁場や電流を加えながら、スキルミオンの直接観察が可能なローレンツ顕微鏡法を開発しました。その結果、トポロジカルチャージ「2」を持つスキルミオン分子を生成することに成功しました。これを用いて強磁性体の磁壁を駆動するのに必要な電流密度の1000分の1以下でスキルミオン分子を駆動させることに成功しました。

この成果は、スキルミオン分子がもたらす磁気輸送特性や、高密度・低消費電力性を生かした磁気メモリ素子の研究・開発につながると期待できます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関物性研究グループ
上級研究員 于 秀珍 (ウ・シュウシン)

創発物性科学研究センター
センター長 十倉 好紀 (とくら よしのり)
(強相関物性研究グループ グループディレクター
 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科教授)