広報活動

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2014年2月20日

理化学研究所

超新星「カシオペア座A」は非対称に爆発した

-高エネルギーX線宇宙望遠鏡でチタンの鮮明な天体写真を撮影-

超新星残骸「カシオペア座A」に存在する金属元素の空間分布(提供 NASA/JPL-Caltech)

超新星残骸「カシオペア座A」に存在する金属元素の空間分布

チタン-44(青)、鉄(赤)、ケイ素およびマグネシウム(緑)

生き物と同様に、自分で発光している星(恒星)にも寿命があります。重い星は年をとると大きく膨らみ、最後には大爆発で一生を終えます。これが超新星爆発です。超新星爆発というと、特別に明るい新しい星が生まれるのでは?などと思われがちですが、そうではなく、星が見せる最期の輝きなのです。

初期の宇宙では、存在する元素は水素とヘリウムだけでした。それより重い元素のうち、鉄までの元素は恒星の内部で起きる核融合で生成されます。また、鉄よりも重い元素は重い星の超新星爆発時に元素同士の合体によって生成され宇宙空間に飛び散ります。この中には崩壊して別の元素になり固有のエネルギーのガンマ線を放出するものがあります。ガンマ線のうちエネルギーの低いものは高エネルギーX線と波長領域が重なっており、このエネルギーを観測し正確な空間分布を決めれば、元素の起源や超新星爆発のメカニズムの解明に迫ることができます。ただ、ガンマ線や高エネルギーのX線を集光して高感度で観測することは技術的に困難でした。

理研と米国カリフォルニア工科大学の研究者で構成された国際共同研究グループは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の科学衛星「NuSTAR」に搭載した高エネルギーX線集光望遠鏡を使い、超新星爆発の残骸である「カシオペア座A」を観測し、放射性チタンであるチタン-44が放出した高エネルギーX線を鮮明に撮影することに成功しました。この写真を分析したところ、チタン-44は爆心から非対称に分布していることが分かりました。これによって、従来の超新星爆発モデルのうち「合成された元素が“球対称”に散る」モデルや、「ある方向にのみ“軸対称”に吹き飛ぶ」モデルは適切ではないことが分かりました。また、爆発時のチタン-44の総質量は、地球質量の40倍に達することも確認できました。

超新星爆発と、それに伴う元素合成の時間的な変化については、スーパーコンピューターを用いて物理方程式を解くことで調べる手法を用いています。その元素合成モデルを、より精度の高いものにするためには、爆発時に生成される不安定核の質量や寿命といった原子核の基礎的な情報を網羅したデータベースが必要です。また、計算したモデルが正しいかどうかを検証するためにも、今回のように、天体観測による元素の実測値を得ることは重要になります。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 玉川高エネルギー宇宙物理研究室
特別研究員 北口 貴雄 (きたぐち たかお)