広報活動

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2014年2月20日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学

ディラック状態を固体と固体との「界面」でも検出

-トポロジカル絶縁体を用いた低消費電力素子への応用に期待-

試料の断面図とトンネル伝導測定のイメージ図

試料の断面図とトンネル電流測定実験のイメージ

「表面」と「界面」-。似ているようで全く違います。この違いを表した有名な言葉に、「表面は悪魔の仕業」(ヴォルフガング・パウリ)と「界面こそがデバイス」(ヘルベルト・クローマー)というのがあるそうです。パウリは1945年に、クローマーは2000年に、それぞれノーベル物理学賞を受賞しています。2人の言葉は「表面」の安定的な制御は大変難しいことと、大多数の半導体デバイスにおいて「界面」が機能を果たしていることを指摘しています。“表面の悪魔”を“界面”でどう活かすか…。永年の課題のようですね。

さて、次世代の電子材料として近年、注目されている物質に「トポロジカル絶縁体」があります。この物質は、内部は電流を通さない絶縁体状態であるのに対し、表面は特殊な金属状態で電流を通すという不思議な性質を持ちます。特に表面の金属状態は、エネルギーをほとんど使わないで電子伝導が可能な「ディラック状態」であるため、その状態を低消費電力素子の開発に応用する研究が活発化しています。このディラック状態をつくっているのがディラック電子なのですが、これまで、真空と固体との境界である「表面」では検出されていましたが、電子材料に応用するのに必要不可欠な固体と固体との「界面」では検出された報告はありませんでした。

理研の研究者らを中心とした共同研究グループは、トポロジカル絶縁体の1つ「(Bi1-xSbx2Te3」の薄膜を半導体材料のインジウムリン(InP)基板上に単結晶成長させ、両者を接合した素子を作製しました。この素子の界面の電気的特性を調べるため、「トンネル伝導測定法」を行いました。磁場中でのトンネル電流の変化量が電圧に対して振動する様子を調べ、さらにこの振動のピーク電圧の磁場による変化を観察したところ、磁場の平方根に比例してピーク電圧が変化していました。この振る舞いはディラック電子に特徴的なものであり、検出された界面の電子状態がディラック状態であることが分かりました。また、トポロジカル絶縁体の試料組成比を制御することで、界面のディラック状態を自在に制御できることも示しました。

今回の研究で、実際に固体素子に適用する上で必要となる固体と固体との界面で、ディラック状態が保持されていることを実証しました。これは、既存の半導体技術とトポロジカル絶縁体のディラック状態を融合した新しい素子の開発の可能性を示しています。低消費電力素子の実現に向けて大きく前進しました。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関界面研究グループ
グループディレクター 川﨑 雅司 (かわさき まさし)