広報活動

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2014年3月12日

理化学研究所

糖鎖遺伝子「GnT-IX」が脳だけに発現する新たな仕組みを解明

-ヒストンを修飾する特定の酵素が遺伝子発現の鍵-

模式図

ヒストン修飾による脳特異的なGnT-IX遺伝子の調節(模式図)

糖鎖は1つひとつの糖が鎖状につながった分子で、タンパク質や脂質の上に存在し、それらの機能を調節しています。この糖鎖の付加に異常があると、糖尿病や肺疾患などさまざまな疾患の発症に関わることが分かっています。動物の体内には多様な形状の糖鎖があり、均一に分布せずに臓器や細胞によって異なる糖鎖が作られています。糖鎖は細胞の中で糖転移酵素という酵素によって合成されますが、各臓器や細胞でなぜ異なる糖鎖が作られるのか、その仕組みは未解明でした。

2003年に理研の研究チームは、糖転移酵素の1つで脳だけに存在し、脳の疾患と関連が深い糖鎖を合成する「GnT-IX」という酵素を発見していました。この酵素を作るGnT-IX遺伝子は脳だけに発現するため、その仕組みが分かれば、臓器や細胞によって異なる糖鎖が作られる仕組みの一端を解明することができます。研究チームはマウスを使って、その解明に取り組みました。

研究チームは、これまでにGnT-IX遺伝子を発現しているマウスの脳と発現していない他の臓器とでは、GnT-IX遺伝子周辺にある「ヒストン(DNAが巻きついているタンパク質)」の修飾状態が大きく異なることを明らかにしています。そこで、GnT-IX遺伝子が発現しているマウスの細胞を使って、ヒストンの修飾を行う酵素群を詳細に解析しました。その結果、糖転移酵素GnT-IXを作るGnT-IX遺伝子を発現させるかどうかを決めているのは、遺伝子周辺のヒストンを修飾する特定の2つの酵素であることが分かりました。また、ヒストンが修飾を受けることによって、GnT-IX遺伝子の発現をONにする特定の転写因子が、遺伝子の近くに集まりやすくなることも発見しました。

このように、DNA配列に依存せずに、ヒストンの修飾状態を変化させて遺伝子発現のON・OFFを調節する仕組みをエピジェネティクスと呼びます。今回の成果は、エピジェネティクスの仕組みが、臓器や細胞に特有な糖鎖を形成する上で重要な鍵を握っていることを示しています。糖鎖の付加の仕組みを研究する上で大きな発見といえます。

理化学研究所
グローバル研究クラスタ 理研-マックスプランク連携研究センター システム糖鎖生物学研究グループ
グループディレクター 谷口 直之 (たにぐち なおゆき)