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2014年3月13日

理化学研究所

植物が活性酸素を生成し病原菌を撃退する仕組みを解明

-病原菌侵入の認識から防御応答までの情報の流れを分子レベルで解明-

病原菌侵入の認識から活性酸素生成までの仕組みの図

病原菌侵入の認識から活性酸素生成までの仕組み

活性酸素は、酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものです。生体内のエネルギー代謝や感染防御過程でも発生し、毒性の因子として脂質の酸化、DNAやタンパク質の損傷などを引き起こします。植物には、この活性酸素を使って病原菌を撃退するという仕組みがあります。植物は、病原菌が共通に持っている鞭毛(べんもう)タンパク質や細胞壁の構成因子などの物質を細胞膜型免疫センサーで認識し、病原菌の侵入を感知した後、活性酸素の生成や病原菌の侵入経路の閉鎖、抗菌性物質の合成といった防御応答を誘導します。しかし、その詳細な仕組みは解明されていませんでした。そこで、理研と英国セインズベリー研究所の研究者を中心とする共同研究グループは、免疫センサーと複合体を形成する因子を探索するとともに、免疫センサーからの情報の流れの解明を試みました。

アブラナ科の植物の免疫センサーである「EFR」は、リン酸化酵素としての活性をもち、病原細菌の伸長因子由来のペプチドを認識すると、リン酸化酵素「BAK1」と結合して互いにリン酸化することで活性化されます。また、活性化されたEFRとBAK1は、リン酸化酵素「BIK1」をリン酸化し活性化することが知られていました。そこで、共同研究グループは、共免疫沈降法と液体クロマトグラフィー質量分析法解析を使って、EFRと複合体を形成する因子を探しました。その結果、活性酸素を生成する「RBOHD」という酵素を発見しました。

そこで、免疫センサーから活性酸素生成までの情報の流れを詳細に解析したところ、免疫センサーはBIK1を介してRBOHDをリン酸化して活性化させ、活性酸素を生成するという防御応答を誘導していることが分かりました。さらにBIK1を介しRBOHDによって生成された活性酸素は、病原菌の主な侵入経路である気孔を閉じて菌の侵入を防ぐことも分かりました。RBOHDによって生成された活性酸素は、毒性をもつ因子として直接病原菌を攻撃するだけでなく、情報を伝達する因子としても働いていたのです。

本研究によって、免疫センサーから防御応答の1つである活性酸素の生成までの情報の流れが、初めて分子レベルで解明されました。この成果は、今後の免疫センサーの情報伝達研究の根幹をなす重要な知見になります。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ
グループディレクター 白須 賢 (しらす けん)