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2014年3月13日

理化学研究所

ウイルス感染に伴う疲労倦怠感は脳内炎症が引き金

-脳内の炎症性物質とその働きを阻害する物質のバランスが疲労回復に関係-

末梢へのウイルス感染が疲労倦怠感を招く

末梢へのウイルス感染が疲労倦怠感を招く

インフルエンザにかかると、発熱や筋肉痛とともに強い倦怠感に襲われることがありますね。これは、ウイルスが気道粘膜などに感染すると免疫細胞が炎症性物質を放出し、そのシグナルが脳に「疲れ」を感じさせているものと考えられています。しかし、ウイルス感染による疲労倦怠感の発症に関わる脳内メカニズムは未だ分かっていません。そこで、理研の研究チームは、インフルエンザ感染と似た症状を示す「疑似ウイルス感染ラット」を使い、脳内炎症によって疲労倦怠感が起きるメカニズムの解明に取り組みました。

研究チームは、発熱や自発的な活動の低下といった、ウイルス感染時の急性症状に伴う脳内の炎症性物質の変化を調べました。まず、発熱と疲労倦怠感の関係を調べたところ、ラットに発熱を抑える薬を投与しても、低下した自発活動を回復させることはできませんでした。つまり、発熱と疲労倦怠感は別のメカニズムで起きていると言えます。次に、疑似感染ラットの脳内を調べると、免疫細胞から分泌されるタンパク質性因子「インターロイキン-1β(IL-1β)」などの炎症性物質が強く発現していることが分かりました。IL-1βは、細胞膜上のIL-1受容体と結合してその細胞の炎症反応を促進します。受容体にIL-1βが結合することを阻む物質「IL-1受容体アンタゴニスト」を脳内に投与したところ、疑似感染ラットの脳内の炎症反応は抑えられ、自発活動の低下は全く起こらなくなりました。また、ラットの体内にもともと存在しているIL-1受容体アンタゴニストの量を測定したところ、疑似感染後に大脳皮質や海馬を含む領域で増加しており、この内在性のIL-1受容体アンタゴニストの機能を阻害すると、低下した自発活動の回復が遅れることも分かりました。

これらの結果から、もし脳内でのIL-1受容体アンタゴニストの産生に障害が起きると、一過性の感染や炎症が治った後も疲労倦怠感が軽減されず、慢性化する可能性が考えられます。今後、疲労倦怠感からの回復や慢性化に至る詳細なメカニズムを解明し、さまざまな病気に伴う疲労倦怠感の治療法の開発につなげていきます。