広報活動

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2014年3月15日

独立行政法人理化学研究所
公益財団法人高輝度光科学研究センター
大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所

SACLAの「目」である高性能X線イメージング検出器を開発

-高い放射線耐性・電場が崩れない電荷収集・高速動作・大面積の高仕様を実現-

開発したX線イメージング検出器「マルチポートCCD検出器」の写真

開発したX線イメージング検出器「マルチポートCCD検出器」

2012年に理研と高輝度光科学研究センターが共同で建設した、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」が運用を開始しました。SACLAは大型放射光施設「SPring-8」の放射光より約100億倍明るく、かつパルス幅が約1,000分の1の10フェムト秒(10-15秒)以下という、非常に短い波長のXFEL光を放ちます。物質内の原子の動きをも捉えられる強力な光は、タンパク質の構造や、触媒の反応メカニズムを原子レベルでリアルタイム観測するといった基礎科学分野から金属疲労防止効果のメカニズム解明などの産業利用分野まで、さまざまな研究テーマで活用されています。

X線イメージング検出器は、SACLAで発生させたX線パルスが試料に照射され、試料を透過あるいは試料に当たって回折してくるX線を正確に捉える「目」の役割を果たす重要な装置です。1光子以下の微弱な信号から数千光子を超える強い信号まで、高効率かつ正確に測ることが求められます。ただ、こうした高い仕様を満たす検出器はこれまで存在しませんでした。理研の研究者を中心とした国際共同研究グループは、CCD(電荷結合素子)センサーの先端技術を使い、X線パターンを高い精度で測定できる「マルチポートCCD検出器」の開発に取り組みました。

X線イメージング検出器の開発にあたって目標に掲げたのは(1)医療用レントゲン撮影で年間1億回以上にあたるX線量でも壊れない放射線耐久性(2)多くのX線光子を測定できる効率的な電荷収集(3)SACLAの1秒間の60回という全X線レーザーショットを正確に測定する性能(4)センサーの大型化(100mm×100mm)-という高いスペックの実現でした。

共同研究グループは、半導体の上に絶縁層を、その上に金属を乗せたMIS構造のCCDセンサーを開発することにしました。従来、CCDセンサーは高強度のX線が照射される環境では、センサー内の絶縁体が帯電して動作しないとされていましたが、酸化物層を特に薄くすることで要求された耐久性を実現しました。また、CCDセンサーの構造を最適化することで、センサー内部の電荷収集を担う電場が崩れない条件を、シミュレーションによって見いだしました。これにより、1光子を間違いなく捉えつつ、数千光子に至るまでのX線光子を正確に測定することが可能になります。さらに、毎秒60回撮像できるように高速動作時のノイズの軽減を図ったほか、大画面イメージ領域を実現するため、1個25mm×50mmの大型センサーを8個並べる構造としました。

開発したマルチポートCCD検出器は、XFELサイエンスを支える大きな技術基盤であり、XFEL利用実験データの質・量両面での向上、あるいは新しい実験手法の開拓などの点で、数多くの利用研究に広く波及するものと期待されます。