広報活動

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2014年3月29日

独立行政法人理化学研究所
株式会社カネカ

リグニン構成成分を原料としたバイオプラスチックの微生物生産

-未利用で非食料系の植物資源から作られるプラスチック-

顕微鏡写真

リグニン誘導体を炭素源とし、PHAを蓄積したラルストニア・ユートロファH16の顕微鏡写真

石油由来のプラスチックの代替材料の有力な候補として注目されているのが「バイオプラスチック」です。生物由来の資源であるバイオマスを主原料とするバイオプラスチックは、これまで大気中の二酸化炭素の量を総体的に増加させない「カーボンニュートラル」という観点が強調されてきましたが、実用化に向けていくつかの課題がありました。食料系バイオマスを原料にバイオプラスチックを生産することによる食料問題の悪化もその1つです。これを回避するには、食料生産と競合しない非食料系で未利用のバイオマスを原料にすることが望まれています。

未利用の非食料系バイオマスとして知られているリグニンは、植物の細胞壁に多く含まれる、芳香族化合物で構成される高分子量の化合物です。リグニンの構成成分の中には微生物細胞内でバイオプラスチックの一種「ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)」の前駆体となる成分も含まれています。つまり、理論的にはリグニン誘導体を原料としたPHAの生産が可能なのです。ただ、分解性が低いことや、分解後に得られる分解物が微生物などへ毒性を示すこともあって利用が難しいとされていました。理研の研究者を中心とする共同研究グループは、この問題を解決して、リグニンを原料に、微生物を利用したバイオプラスチック合成に取り組みました。

共同研究グループは、複数の微生物にリグニン誘導体と芳香族カルボン酸を与えてPHAが合成できるかどうか試みました。その結果、PHAの生産株として有名な真正細菌「ラルストニア・ユートロファH16」が、4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)など複数の芳香族化合物からPHAを合成することを確認しました。4-HBAを用いた場合、微生物の乾燥菌体重量の63wt%(質量パーセント濃度)程度まで微生物内に蓄積でき、生産性が高いことが分かりました。また、得られたPHAは、糖や植物油を原料に合成したPHAに比べ、分子量がやや低いものの、フィルムなどのプラスチック製品として利用可能な物性を示しました。

今回の成果によって、これまで利用困難とされたリグニンを用いた微生物による物質生産の基盤技術の構築が進むと考えられます。今後は、バイオプラスチックの生産という形だけでなく、多様なバイオリファイナリー技術と融合し、幅広い物質生産に利用していくことが求められます。共同研究グループは、リグニン分解とバイオプラスチックの合成を同時に進める新しい微生物反応系の構築を目指していきます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター バイオマス工学連携部門 酵素研究チーム
チームリーダー 沼田 圭司 (ぬまた けいじ)