広報活動

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2014年4月1日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東北大学
株式会社リコー

微小絶縁体粒子間の電位分布の解析に成功

-レーザープリンターの高精細・省エネルギー化に寄与-

電位分布

図 分離照射法と従来法で得た位相像の比較

レーザープリンターは、静電気の力を利用して画像形成を行うプリンターです。常に画像品質の高度化や省エネルギー化が求められていますが、画質を大きく左右するトナー粒子(プリンターに使用するミクロンサイズの粒子)とキャリア粒子(トナーを運ぶ磁性粒子)の間の静電相互作用は未だに明らかになっていません。これを解析する有効な手段の1つに、電磁場の可視化と同時に、微小領域の電位を感度良く計測できる電子線ホログラフィーがあります。この方法では、観察箇所を通過した電子波(物体波)と、真空領域を通過した電子波(参照波)を干渉させて得られる干渉縞(ホログラム)から、試料の電磁場を物体波の波面の変異として計測します。しかし、試料の内部だけでなく外部にも無視できない強さの電磁場がある場合には、参照波が大きく歪み高精度な計測ができません。また、トナー粒子とキャリア粒子は絶縁体のため、電子線が照射されると試料自身が帯電し電位分布の解析の邪魔をする、という問題がありました。

理研の研究者を中心とした共同研究グループは、トナー粒子とキャリア粒子間の静電相互作用を調べるため、電子線を偏向するプリズムによって電子波を2つに分け、一方が観察領域を、他方が試料から離れた参照領域を通過するようにした分離照射電子線ホログラフィーを改良し、電子顕微鏡の照射部にマスクを設置して試料を電子波から隠すようにしました。この新しい分離照射電子線ホログラフィーでは、レンズの動きで試料面上にマスクの影ができ、マスクのエッジで散乱された電子線が試料に照射される問題が起きません。従来法と比較した結果、従来法では試料からの電場で歪んだ参照波の影響によって、トナー粒子とキャリア粒子間の位相像が正しく得られていないことが分かりました。

そこで、トナー粒子が正の電荷を帯びた正帯電型と、負の電荷を帯びた負帯電型の2つの試料を、分離照射法で比較解析したところ、どちらの試料も局所的な電位分布を持つことが分かりました。また、トナー粒子とキャリア粒子が接触する場所での電荷のやり取りによる電位分布と、その電場によって誘発される分局を示す電位分布の解析にも初めて成功しました。

電子線ホログラフィー技術を基盤とした新しい解析方法により、トナー粒子とキャリア粒子が引き合うメカニズムが明かになりました。今後、この成果を応用した高画質・省エネ型のレーザープリンターや、電場を利用するさまざまな電子デバイスの開発における有力な解析方法として活用が期待されます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 創発現象観測技術研究チーム
研究員 谷垣 俊明 (たにがき としあき)
チームリーダー 進藤 大輔 (しんどう だいすけ)
(国立大学法人東北大学 多元物質科学研究所 教授)