広報活動

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2014年4月10日

理化学研究所

アレルギー反応を引き起こす新たな誘導因子を発見

-死細胞から放出されるDNAが炎症性T細胞の分化を誘導-

死細胞から放出されるDNAによるTh2細胞の誘導の図

死細胞から放出されるDNAによるTh2細胞の誘導

私たちの体には異物を見分け、攻撃する免疫システムが備わっています。ところが、花粉やハウスダストなど、異物ではあるが病原体ではない物質に対して免疫システムが過剰に反応すると、アレルギー疾患が発症します。アレルギーの発症には、免疫応答の司令塔であるヘルパーT細胞の1つ「Th2細胞」が重要な役割を果たすことが知られています。抗原と接触したことがないT細胞(ナイーブT細胞といいます)が花粉などの抗原と出会って、抗原に対してアレルギーを誘導するTh2細胞に分化します。しかし、ナイーブT細胞からTh2細胞に分化する仕組みはよく分かっていませんでした。共同研究グループは、その仕組みの解明に取り組みました。

共同研究グループは、核酸(DNA、RNA)がT細胞の機能に及ぼす影響を調べました。その結果、自らの細胞に由来するDNAが、DNAの折りたたみに重要なヒストンや炎症などによって放出される抗菌ペプチドなどと複合体を形成し、T細胞の活性化を強く促していることを発見しました。DNAはこれまで、樹状細胞などの自然免疫細胞だけに感知されると思われていましたが、それだけでなく、T細胞を直接活性化することが分かりました。さらに、DNAによる刺激がナイーブT細胞からTh2細胞への分化を促していることが分かりました。

生体内では、DNAの供給源は死細胞と考えられています。そこで、共同研究グループは、死細胞が存在する中でナイーブT細胞を活性化し、ヘルパーT細胞の分化を解析しました。その結果、炎症性のTh2細胞への分化が特に促進されていることが分かりました。このTh2細胞への分化は、DNA分解酵素の存在下では観察されなかったことから、死細胞に由来するDNAがTh2細胞への分化に関与していることが明かになりました。また、DNAによるTh2細胞への分化に関与する遺伝子群の発現を抑制する転写因子の発現がDNAの刺激によって強く抑制されることも分かりました。これらから、死細胞から放出されるDNAをT細胞が感知し、Th2細胞の分化に必要な遺伝子群の発現スイッチをオンにすることによって誘導されることが明らかになりました。

今回の成果は、今後、細胞外のDNAを標的にしたアレルギー疾患の治療法や予防法の開発につながると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 免疫シグナル研究グループ
グループディレクター 齊藤 隆 (さいとう たかし)