広報活動

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2014年4月14日

理化学研究所

ゴルジ体シス槽は小胞体に接触し積荷タンパク質を受け取る

―小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送機構の新たなモデルを提案―

新しい小胞体からゴルジ体への積荷タンパク質の輸送モデル図

新しい小胞体からゴルジ体への積荷タンパク質の輸送モデル

ヒトや酵母などの細胞内にある細胞小器官の1つ「小胞体」では多様なタンパク質が作られています。これらのタンパク質はゴルジ体へ運ばれて修飾を受け、それぞれが働くべき目的地へと輸送され細胞の生命活動に必要な機能を果たしています。この輸送機構の基本的な仕組みは全ての真核生物に共通ですが、従来は、COPⅡ小胞と呼ばれる輸送を担う小胞が、小胞体で積荷となるタンパク質を乗せて細胞内を漂い、ゴルジ体のシス槽(積荷タンパク質を受け取る側の槽)に運ばれると考えられていました。しかし、この仕組みが正しいかは立証されていませんでした。理研の研究チームは酵母細胞を使い、小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送機構の解明に取り組みました。

研究チームは、独自開発の高速高感度共焦点顕微鏡システム(SCLIM)を用いて、COPⅡ小胞の被覆タンパク質と、ゴルジ体のシス槽、およびトランス槽(積荷タンパク質が仕分けされ搬出される側の槽)のタンパク質を異なる蛍光タンパク質で標識し、その挙動をライブイメージングで詳細に調べました。その結果、シス槽がCOPⅡ小胞に接近し接触すること、シス槽の接触に伴って蛍光標識したCOPⅡ小胞の被覆タンパク質の蛍光シグナルが減少することを発見しました。トランス槽では、このような挙動は見られませんでした。これにより、シス槽の接触でCOPⅡ小胞の被覆タンパク質が外れることが示されました。さらに、小胞体からゴルジ体への積荷タンパク質の輸送を阻害した細胞で、同様の観察を行ったところ、シス槽だけがCOPⅡ小胞に接触する数が増えていました。これらから、研究チームは「シス槽がCOPⅡ小胞と接触している間に、シス槽とCOPⅡ小胞の繋留(けいりゅう)と膜融合(ハグ&キスアクション)が起きて、積荷タンパク質がシス槽に運ばれる」という仮説を立てました。

そこで、積荷タンパク質がCOPⅡ小胞に積み込まれる様子を調べました。その結果、積荷タンパク質がCOPⅡ小胞の中に入った後、COPⅡ小胞の被覆タンパク質の蛍光シグナルが減少することが分かりました。次に積荷タンパク質とシス槽の挙動をライブイメージングで詳細に解析したところ、シス槽が小胞体に接触するのに合わせて積荷タンパク質が小胞体からシス槽に入り、その後、シス槽は積荷タンパク質を含んだまま小胞体から離れることが分かりました。

これらの結果から、研究チームは、従来考えられていたCOPⅡ小胞が小胞体から遊離して細胞質を漂い、シス槽にたどり着くというモデルではなく、「シス槽が小胞体のCOPⅡに接触して、積荷タンパク質を受け取ることで、積荷の輸送が行われる」という新しいタンパク質輸送機構のモデルを提案しました。このモデルは、従来モデルに比べて選択的な輸送が可能になるため、より正確で安全に積荷タンパク質を小胞体からゴルジ体に輸送できます。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ ライブセル分子イメージング研究チーム
専任研究員 黒川 量雄 (くろかわ かずお)
チームリーダー 中野 明彦 (なかの あきひこ)