広報活動

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2014年4月16日

理化学研究所

最後の時計遺伝子見つかる

-精神機能などの高次機能と概日リズムとの関係解明のカギに-

クロノを含む哺乳類概日リズムの分子機構の図

クロノを含む哺乳類概日リズムの分子機構

「概日リズム」は体内時計ともいわれ、おおよそ24時間周期で変動する生理現象です。ほぼすべての生物に存在し、睡眠や覚醒、ホルモンの分泌、血圧・体温調節などの生理活動を制御しています。概日リズムの乱れは、内分泌系や代謝系、自律神経系などに影響を与えます。時差ボケや睡眠障害にととまらず、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、精神疾患にも関わるとされています。概日リズムをコントロールしているのが「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子群です。これまでの研究で、体内時計の刻みを促進する因子(時計転写因子)としてBmalClockの2つの時計遺伝子群が、また抑制する因子(時計抑制因子)としてCryPeriodの2つの時計遺伝子群が知られていました。概日リズムの分子メカニズムは、時計遺伝子による転写翻訳フィードバックループ(TTFL)に基づくものであると考えられていましたが、その全容はまだ明らかではありませんでした。

理研の研究者を中心とした共同研究グループは、時計転写因子タンパク質「BMAI1」の標的となる遺伝子をゲノムワイドかつ網羅的に解析しました。その結果、概日リズムを示す新規遺伝子としてGm129を発見し、これを「Chrono(クロノ)」と名付けました。すべての遺伝子の発現様式が明らかになっている現在、クロノは“最後に明らかにされた時計遺伝子”ということになります。

クロノの発現活性を測定するために、クロノを蛍光を発する遺伝子に置き換えて測定したところ、クロノはTTFLにおけるネガティブフィードバックループ、つまり、転写を抑制する因子として機能していることが分かりました。次に、クロノ欠損マウスと概日リズムの中枢である脳視交叉上核のAvpニューロンを欠損したマウスを作成し、行動の様子と時計遺伝子の発現を調べました。その結果、概日リズムの周期が延び、時計遺伝子の発現に変動がみられました。これらの結果は、クロノが時計抑制因子として働いていることを意味します。また、時計抑制因子のCry1 Cry2の二重欠損でみられる概日リズムが、Cry1Cry2 Chronoの三重欠損では消失したことから、クロノが重要な時計抑制因子であることが明らかになりました。また、クロノはストレス刺激に直接反応し、ストレスによる代謝反動にも関わることが分かりました。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 精神生物学研究チーム
チームリーダー 内匠 透 (たくみ とおる)