広報活動

Print

2014年4月24日

理化学研究所

中性子ハロー核11Beの超微細構造定数の精密測定

-光でハロー中性子を直接見るための第一歩-

ポイント

  • 中性子ハロー核11Beの超微細構造定数の精密測定を世界で初めて実現
  • レーザーとマイクロ波で中性子ハローの広がりを観測するための第一歩
  • 原子核模型に依存しない測定法で究極の原子核描像の構築に道筋

要旨

理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、中性子ハロー核[1]の1つ「質量数11のベリリウム同位体イオン(11Be+)」の超微細構造定数[2](超微細構造のエネルギー分離の大きさを定義する量)を、レーザー・マイクロ波二重共鳴法[3]によって精密測定し、その定数(A)を-2677.302988±0.000072 MHzと3,000万分の1の誤差で高精度に決定しました。これは、理研仁科加速器研究センター(延與秀人センター長)低速RIビーム生成装置開発チームの和田道治チームリーダー、高峰愛子客員研究員(青山学院大学理工学部助教)らの共同研究グループの成果です。

1980年代半ばから、米国ローレンス・バークレイ国立研究所や理研などで、中性子が陽子に比べてはるかに多い不安定原子核で、余分な中性子が暈(かさ:ハロー)のように広がっている「ハロー構造[1]」が発見されました。この発見によって、不安定原子核において、それまで安定な原子核で培われた常識[4]が覆されたことから、不安定核研究ブームが起きました。当時は、高速の不安定同位体原子核が他の原子核と衝突して反応を起こす確率や、分離した中性子のエネルギー分布などからハロー中性子[1]の広がりを求めていました。

電荷を持たない中性子の広がりを直接測定することは困難でしたが、90年代半ばに、和田らを中心とした研究グループは中性子が持つ磁化を探針とするボーア・ワイスコフ効果(超微細構造異常)[5]を用いた新たな中性子ハロー研究計画を提案しました。今回、その実験に必須な、超低速RIビーム生成装置(SLOWRI)[6]の原型を開発し、中性子ハロー核11Beの超微細構造定数の精密測定に世界で初めて成功しました。この結果は、引き続き行われる予定の核磁気モーメントの精密測定と合わせて、ハロー中性子の平均分布半径の高確度決定に大きく寄与する重要な成果です。

新しい精密測定法は、不定性の大きい核力を使わず、レーザーやマイクロ波という、よく分かっている電磁相互作用だけを使って測定するものです。適用できる原子核は限られるものの、より信頼度の高い中性子ハローの研究が可能となります。さらに、RIビームファクトリー(RIBF)[7]で整備され、現在調整中のSLOWRIでは、光を使った、原子核モデルによらない高確度の核構造測定を、より広範の不安定原子核について展開する計画であり、究極の原子核描像の構築に寄与すると期待できます。

本研究成果は、米国の科学雑誌『Physical Review Letters』に掲載されるに先立ち、オンライン版(4月24日付け:日本時間4月24日)に掲載されます。

背景

1985年、米国ローレンス・バークレイ国立研究所において、中性子数が陽子数より極端に多い不安定原子核が、異常に大きい核半径を持っていることが発見されました。続く研究から、その原子核は余分な中性子のうち1個ないし2個が、芯の周囲にぼんやりと広がって存在していることが分かり、中性子ハロー核と命名されました(図1)。これが、以降の実験および理論核物理学の両面で、不安定原子核の研究を発展させるきっかけになりました。一方、和田らを中心とする研究グループは、1996年に、それまでのハロー核研究とは異なる、レーザー核分光法によるハロー核研究を提案しました。原子核の大きさは、原子の大きさのさらに数万分の1と小さいため、顕微鏡的に光で見ることはできません。しかし、原子のスペクトル線の精密観測で発見されたスペクトルの超微細構造から、原子核の大きさや、磁化(棒磁石の性質)を見いだすことができます。これがレーザー核分光法です。

原子核の大きさといっても、物質的大きさ、電気的大きさ、磁気的大きさなど、さまざまです。ハロー核の発見は、高速の原子核が標的の原子核と衝突する確率から求めた物質的大きさの測定によってなされました。一方、レーザー核分光法を使うと、電気的大きさを測定でき、これまでに不安定核を含む約600の原子核が測定されています。この原理は、原子核の内部に入り込んだ電子は、その位置より外側にある電荷を感じないため、スペクトル線の波長がごくわずかずれることによっています。これは、地球の反対側に向けて掘ったトンネルにボールを落とすと、地球の中心ではボールは地球の重力を感じないことと同じ原理です。光を使って測定する方法の最大の特徴は、明確に分かっている電磁相互作用だけを使って測定するため、原子核のモデルを仮定することなく、正確に大きさを求めることができることです。

共同研究グループが注目したベリリウム同位体の中性子ハロー核11Beは、10Beの芯のまわりに1個の中性子がハロー状に存在していると考えられています(図1)。単純化した解釈では、電気的大きさは、陽子を含む芯の部分の大きさに相当し、ハロー中性子を直接観測することはできません。しかし、レーザー核分光法でベリリウム同位体の電気的大きさを測定した欧州の研究グループによる先行研究があり、10Beに比べて11Beは電気的大きさが少し大きくなっていることが分かっています。これは、ハロー構造の中性子によって芯の中心と全体の重心が少しずれるため、電気的な大きさも少し大きくなっていると解釈され、中性子ハロー構造を間接的に支持した結果となっています。

共同研究グループは、電荷がない中性子でも磁化を持っていることに着目し、ハロー中性子の広がりを直接観測する方法を考案しました。とりわけ11Beの場合は、1個のハロー中性子が核全体の磁化のほとんどを担っているため、磁気的大きさが、直接ハロー中性子の広がりを反映したものと解釈できるという提案です(図1)。

原子核の磁化を観測できる量として、「超微細構造定数」と「核磁気モーメント」があります。前者は原子の電子が原子核の位置に作る磁場を探針にして測定した量、後者は外部から印加した磁場を探針にして測定した量とみなすことができます(図2)。一般にはその差が10万分の1程度しかないため、区別せずに使われていることが多いのですが、この違いが原子核の磁気的大きさを反映した量になっています。この違いの原因は、外部から印加した磁場は原子核の大きさの範囲で極めて一様であるに対して、電子がつくる磁場は、たとえ原子核の大きさ程度の小さい領域にあっても、不均一な場合があるからです。この原理は1950年にボーアとワイスコフによって超微細構造異常(ボーア・ワイスコフ効果)として発見されました。超微細構造定数と核磁気モーメントの両方を100万分の1以上の高精度で測定することで、初めて原子核の磁気的大きさを観察することができます。

研究手法と成果

不安定原子核の超微細構造定数を100万分の1以上の高精度で測定するには、試料イオンをイオントラップに保持した上でレーザー冷却を施して絶対零度[8]近くまで冷却し、レーザー・マイクロ波二重共鳴法で、原子の「超微細構造遷移周波数」を直接測定する必要があります。

この測定を可能にしたのが理研の加速器施設です。まず、理研リングサイクロトロンで加速した炭素ビームを標的原子核に衝突させ、RIビーム分離精製装置(RIPS)[9]で10億電子ボルトの11Beビームを分離・生成します。このビームを超低速RIビーム生成装置(SLOWRI)のプロトタイプ装置で低エネルギービームに変換し、冷凍機で10Kに冷したイオントラップ装置に導きます。40秒間ほど、薄いヘリウムガスを充填してイオンを蓄積した後、ガスを排気し、円偏光した313 ナノメートル(nm)のレーザーを照射し、レーザー冷却によってイオンを絶対温度で数10ミリKまで冷却します。このような状態のイオンは、ある特定の原子準位間を励起・脱励起を繰り返し、イオン1個あたり毎秒100万個以上の蛍光光子を放出するため、ごく少数(100個程度)のイオンでも容易に観測できます。

超微細構造定数は、原子(イオン)のスペクトル線の超微細構造準位の間を直接つなぐ遷移の周波数を測定することによって求められますが、この遷移は光とはいっても3 GHz程度のマイクロ波になります。この周波数のマイクロ波の光では、光子1個あたりのエネルギーが可視光の100万分の1しかないため、マイクロ波の吸収・放出を少数個の原子に対して検出することはできません。そこで、レーザー・マイクロ波二重共鳴法を用いました。これは、レーザーとマイクロ波を交互に照射し、マイクロ波による遷移が起きた時に、レーザー照射時の蛍光強度が変わることを利用する一般的方法です。

11Beの半減期が13.8秒と短いため、レーザー冷却したあと、マイクロ波の周波数を2秒間でスキャンするとしても、それを10回くらい繰り返すと減衰してしまうので、再度蓄積する必要があります。これを何回も繰り返すことによって、マイクロ波の共鳴スペクトルが鮮明に見え(図3)、このスペクトルから共鳴周波数を高精度で求めることができました。いくつかの異なる条件と、異なる遷移を測定することにより、11Be+イオンの超微細構造定数 A=-2,677.302988(72) MHz、およびその符号(これは核磁気モーメントの符号でもある)を決定し、さらに核スピン量子数(I[10]を1/2と確定しました。

ベリリウム同位体における、本研究の成果と過去の成果をまとめたのが図4です。本研究は、超微細構造定数の精密測定に徹したものでしたが、磁化の広がりを無視した近似で核磁気モーメントも導き出だすこともでき、一般的な核構造理論の検証には十分な確度です。一方、中性子ハロー核の磁化の広がりを導き出すには、この近似法の値では意味がなく、核磁気モーメントの直接測定が必要になります。図4に示すように、3種類のベリリウム同位体のうち、安定同位体の9Beのみ光学的分光法によって高精度で直接核磁気モーメントが測定されていますが、7Beと11Beの不安定同位体ではまだ不十分です。11Beについては欧州原子核研究所においてβ線を使った核磁気共鳴法によって2,000分の1の誤差で測定されていますが、ハロー中性子を見る目的には全く不十分な精度です。さらに、7Beは、β線を一切出さないので、11Beで使われた方法さえも使えず、光学的分光法が唯一の方法となっています。原子核の磁気的大きさを測り、ハロー中性子を見るためには、よりいっそうの実験技術の開発が必要となります

今後の期待

理研仁科加速器研究センターでは、あらゆる元素の不安定原子核を調べることにより、長く安定核のみで理解されてきた原子核の成り立ちについて、不安定核をも含む統一的な描像を構築することを目指しています。この目的のために、精密分光研究を行う実験設備として、低速およびイオントラップされたRIを供給する新しい超低速RIビーム生成装置(SLOWRI)が整備され、現在調整が進んでいます。SLOWRIは、RIBFの超伝導リングサイクロトロンで加速された重イオンにより超伝導RIビーム分離生成装置(BigRIPS)で生成されるあらゆる元素のRIビームを減速冷却して低エネルギーRIビームないしトラップされたイオンに変換する機能と、他の実験に必要なRIを分離する過程で捨てられているRIを有効活用して低エネルギーRIビームに変換して、下流の実験設備に導く機能を有しています。今後、光学的分光ばかりでなく、短寿命原子核の質量の網羅的精密測定も計画されています。

トラップされた不安定核イオンの分光研究は、SLOWRIの研究の柱の1つです。本研究の発展として、最初にベリリウム同位体の核磁気モーメントの精密測定から始めたいと考えています。共同研究グループは、これまでに安定ベリリウム同位体9Beにおいて、強磁場中の超微細構造のレーザーとマイクロ波、ラジオ波の三重共鳴法による精密測定から、超微細構造定数と核磁気モーメントの双方を同時かつ独立にそれぞれ10億分の1、1,000万分の1の高精度で決定することに成功しています。この手法を7Be、11Beに適用し、中性子ハローを直接光で観察することを完結させる計画です。

原論文情報

  • Takamine,A., Wada,M., Okada,K., Sonoda,T., Schury,P., Nakamura,T., Kanai,Y., Kubo,T., Katayama,I., Ohtani,S., Wollnik,H., Schuessler,H.A. "Hyperfine Structure Constant of the Neutron Halo Nucleus 11Be+", Physical Review Letters, 2014, doi: 10.1103/PhysRevLett.112.162502

発表者

理化学研究所
仁科加速器研究センター 実験装置開発室 低速RIビーム生成装置開発チーム
チームリーダー 和田 道治 (わだ みちはる)

お問い合わせ先

仁科加速器研究推進室
Tel: 048-467-9451 / Fax: 048-461-5301

報道担当

理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
お問い合わせフォーム

産業利用に関するお問い合わせ

理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部
お問い合わせフォーム

このページのトップへ

補足説明

  1. 中性子ハロー核、ハロー構造、ハロー中性子
    1940年代以降の安定な原子核における常識では、原子核を構成している陽子と中性子は均等に分布し、体積密度は原子核の種類によらずほぼ一定であるとされてきた。一方、近年発見された中性子数が陽子数より極端に多い不安定核には、余った中性子が陽子と異なる分布を持つものがある。中には、余った中性子の内、1個ないし2個が、それ以外の核子に比べてはるかに大きく広がって存在し、芯の部分に弱く結合している原子核があり、それを中性子ハロー核と呼ぶ。また、そのような構造をハロー構造、そのハローを形成している中性子をハロー中性子と呼ぶ。
  2. 超微細構造定数
    原子のスペクトルの分解能の向上により、スペクトルの微細構造、さらに超微細構造が発見された。1800年代にマイケルソンによって超微細構造が発見された以降、長年の間その構造の原因は不明だったが、1924年の長岡半太郎の詳しい実験結果を見たパウリは、それが原子核のスピン(コマのような性質)とそれに伴う磁石の性質によるものであることを発見した。超微細構造は、電子と原子核の相互作用に起因し、その相対的な向きによってエネルギー準位に差が生じる。超微細構造定数は超微細構造のエネルギー分離の大きさを定義する量である。超微細構造準位間の遷移エネルギーは、今日、最も精密に測定可能な物理量の1つであり、例えば、時間標準として用いられている原子時計は、セシウム原子の超微細構造遷移周波数をもとにしている。
  3. レーザー・マイクロ波二重共鳴法
    超微細構造の分離エネルギーをマイクロ波で直接かつ感度良く測定する分光法。まずレーザーの周波数を固定してある準位から励起準位の間の励起・脱励起を繰り返す状況をつくる。そこに、その準位から別の超微細構造準位に遷移させるようなマイクロ波を照射すると、レーザー照射に伴う蛍光の強度が変化することを利用して、マイクロ波による共鳴を検出する。マイクロ波の光子1個の吸収を、それより100万倍もエネルギーの高い可視光光子に増幅するとみなすことができ、この増幅には雑音発生の機構がないので、量子増幅と呼ぶ。
  4. 安定な原子核で培われた常識
    従来の原子核物理学では、安定な原子核での研究を通じた知見に基づき、例えば、核密度はほぼ一定のため大きさは質量数から一意的に求められるといった理解がなされていた。しかし今日では、不安定核においてハロー構造などの特異な構造が見つかってきており、不安定核をも含めた原子核の描像の構築に迫られている。
  5. ボーア・ワイスコフ効果(超微細構造異常)
    超微細構造定数は、原子核の磁化と軌道電子の相互作用の強度を示す量なので、電子の構造が同一な同位体間では、核g因子(核磁気モーメントとスピンの比)に比例するはずだが、若干のずれが観測され、超微細構造異常と呼ばれていた。ボーアとワイスコフは1950年にこの異常を解明するために、核内磁化分布の概念を導入し、理論的に解明した。当時の実験技術では、その効果が大きい陽子奇核の測定のみしかなく、その主たる原因は陽子の軌道角運動量に起因する磁化とスピンに伴う磁化の異なる寄与であった。ルビジウムの同位体85Rbと87Rbでは、0.3%もの異常が観測されており、それは原子核全体の向き(全角運動量の向き)に対して、陽子の向きが異なっていることに起因していることが解明された。一方、中性子数のみが奇数の核では、軌道角運動量に伴う磁化は明示的にはないので一般に0.001%程度の小ささに留まり、最新の超精密分光法が必須とされている。
  6. 超低速RIビーム生成装置(SLOWRI)

    RIBFの基幹実験装置の1つであり、2012〜2013年度に整備され、現在、調整が行われている。RIBFの超伝導RIビーム分離生成装置BigRIPSで生成されるあらゆる元素の高速(光速の40%以上)のRIビームを減速・冷却し、高純度かつエネルギーのそろった低速(光速の1000分の1以下)のRIビームに変換する装置。減速冷却する機構は理研で開発された「高周波イオンガイド法」を用いており、プロトタイプ装置において不安定核イオンのレーザー冷却・分光に成功している注1)。短寿命核の精密質量測定注2)のほか、レーザー分光による短寿命原子核の半径や電磁モーメントの測定などが計画されている。

    注1)2008年11月19日プレス発表 光速の40%の高速RIビームを1億分の1まで減速・冷却
    注2)2013年7月17日プレス発表 短寿命原子核の高精度質量測定法MRTOFを開発

  7. RIビームファクトリー(RIBF)

    水素からウランまでの全元素の不安定原子核(RI)を世界最大強度でビームとして発生させ、それを多角的に解析・利用することにより、基礎から応用にわたる幅広い研究と産業技術の飛躍的発展に貢献することを目的とした次世代加速器施設。施設は、RI ビームを生成する「RI ビーム発生系施設」と、生成された RI ビームの多角的な解析・利用を行う「基幹実験設備」で構成する。 RIビーム発生系施設は、2007 年 3 月に完成し、2007 年 6 月には新同位元素125Pd (パラジウム 125)の生成に成功注1)して以来、加速器の性能は既に世界一の重イオンビーム強度を達成し、多数の世界的成果を上げている注2-8)。RIビームは、原子核の構成メカニズムおよび元素の起源の解明に有用であるとともに、RI 利用による産業発展に寄与することが期待され、ドイツ、米国など世界の主だった重イオン加速器施設でも次世代加速器施設の整備が計画され、国際的にも熾烈な開発競争を展開している。

    注1)2007年6月6日プレス発表 RIビームファクトリーで新同位元素の発見に成功
    注2)2009年7月15日プレス発表 32Ne(ネオン‐32)の大変形観測に世界で初めて成功
    注3)2011年2月1日プレス発表 「超新星爆発の元素合成は想像以上に速い」証拠をつかむ
    注4)2011年5月9日プレス発表 ジルコニウム同位体で変形魔法数を発見
    注5)2012年11月22日プレス発表 RIBFで18種の新たな核異性体を発見
    注6)2013年10月9日プレス発表 「魔法数」を持つ原子核に現れる「特別な核異性体」を発見
    注7)2013年10月10日プレス発表 重いカルシウムで新しい「魔法数」34を発見
    注8)2013年11月20日プレス発表 消える「魔法数」28

  8. 絶対零度
    温度を物質の熱運動としたときに、その運動が停止する温度を絶対零度とし、単位K(ケルビン)で表す。温度目盛の幅は摂氏温度と同じで、摂氏零度(0℃)は273.15 Kである。レーザーに照射された孤立イオンの温度を表す場合は、単にイオンの運動エネルギーを熱運動とみなして絶対温度に換算して表示しているにすぎない。
  9. RIビーム分離生成装置(RIPS)
    理研のリングサイクロトロンで光速の数十%以上に加速された高速の安定核ビームを、標的に衝突させて破砕し、その破砕片を多数の電磁石を用いて分離・収束する装置。同様の装置として、RIBFの BigRIPS のほかにドイツ・重イオン研究所の FRS や米国ミシガン州立大学の A1800 が著名である。破砕片に加えて、ウランビームの核分裂片もRIビームの生成によく使われている。
  10. 核スピン量子数
    原子核には、核スピンと呼ばれる、コマの自転運動に模せられるような特徴があり、その値は原子核の構造を特徴づける重要な量である。核スピンは、プランク定数ћを単位にして1/2ћ、1ћ、3/2ћ … と飛び飛びの値をとり、このћを取った1/2、1、3/2を核スピン量子数(I)と呼ぶ。不安定原子核の核スピンの決定は、ベータ崩壊の強度などから決定されることが多いが、最も正確な方法は、超微細構造の外部磁場依存性から決定する方法である。

このページのトップへ

模式図

図1 中性子ハロー核11Beの模式図

陽子(赤色)4個と中性子(青色)7個から構成される11Beの単純化した模式図。1個のハロー中性子が、芯である10Beの周りにぼんやりと暈(かさ:ハロー)状に存在している様子を単純化して描いたものであり、電気的半径(rc)は、芯の部分に存在する陽子の分布の大きさに相当し、磁気的半径(rm)は、原子核の磁化をほとんど担っている1個のハロー中性子の平均分布に相当するとみなせる。実際には、半径は重心から測られるので、電気的半径でもハロー中性子の影響で核全体の重心が芯の中心とずれるため、芯だけの大きさを表しているわけではない。また、ハロー中性子の磁化の影響で、芯も若干の磁化を帯びることの評価も必要となる。

概念図

図2 超微細構造定数と核磁気モーメントの相違

同じ原子核の磁化に起因する超微細構造定数と核磁気モーメントの相違点の概念図。原子核の磁化が有限の広がりを持っていると、両者の値が異なる意味を持ち、両者の違いが原子核の磁気的大きさを反映した量となる。

11Be+イオンのマイクロ波共鳴スペクトル

図3 11Be+イオンのマイクロ波共鳴スペクトル

レーザー・マイクロ波二重共鳴法で測定された11Be+のイオンの超微細構造のマイクロ波スペクトル。マイクロ波の周波数をスキャンしながら、レーザー照射時に観測された蛍光強度をプロットしたもの。波を打っているのは、マイクロ波照射をパルス状に与えていることによるラビ振動による効果。この共鳴スペクトルから、共鳴周波数は2,677.37430(10) MHzと決定できた。

図4 ベリリウム同位体イオンの超微細構造定数と核磁気モーメント

このページのトップへ