広報活動

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2014年4月29日

理化学研究所

植物ホルモン「サイトカイニン」の輸送を担う遺伝子を同定

-根から葉へのサイトカイニン長距離輸送の鍵遺伝子-

野生株とabcg14変異体の写真

野生株とabcg14変異体

植物にとって、光合成を行う地上部の「葉」と、水や無機成分の吸収を担う「根」は重要な器官です。植物が環境変化などさまざまなストレスに順応して生き延びていくためには、これらの器官同士のバランスをうまく調節する必要があります。それには、器官間の緊密な情報のやり取りが欠かせません。ところが、植物は動物のように心臓や血管などの循環系をもっていません。そのため、水や無機成分を運搬する「道管」と有機物を運搬する「師管」を通して、離れた器官の間でシグナルのやり取りをしていると考えられます。しかし、こうした器官間のシグナル伝達メカニズムの理解は、ほとんど進んでいないというのが現状です。そこで、理研の研究者を含む国際共同研究グループは、道管や師管に存在して根と地上部の間を移動し、器官間のシグナルの1つとして働くとされる植物ホルモン「サイトカイニン」に着目し、そのメカニズム解明に取り組みました。

共同研究グループは、実験モデル植物であるシロイヌナズナの変異体の中から、サイトカイニンの欠乏時に現れる、地上部が通常より小さな形のまま成熟する現象「矮化(わいか)」を示す「abcg14変異体」を見いだし、解析しました。abcg14変異体の根と地上部のサイトカイニンの含まれる量を調べたところ、根では増加しているのに対し、地上部では減少していました。また、サイトカイニンを溶かした溶液をabcg14変異体に投与したところ、地上部の成長が回復しました。これらの結果から、abcg14変異体の地上部の矮化はサイトカイニンの分布の不均衡が原因であることが分かりました。

abcg14変異体の原因遺伝子はABCG14です。この遺伝子からABC輸送体サブファミリーGに属する膜輸送タンパク質「ABCG14」が作られます。このことから、サイトカイニン分布の不均衡は根と地上部の間で、サイトカイニンの移行が滞っていることが考えられました。そこで、放射性物質でラベルしたサイトカイニンの根から地上部への移行と道管液中のサイトカイニンの含まれる量を調べてみました。その結果、abcg14変異体では、道管を使った根から地上部へのサイトカイニンの移行が滞っていることを確認しました。

これらの結果から、abcg14変異体の原因遺伝子「ABCG14」は、サイトカイニンの根から地上部への輸送を担う重要な因子であり、根から地上部へと輸送されるサイトカイニンが、地上部の成長を促していることが明かになりました。植物の器官バランス制御の新しいメカニズムが明らかになったことで、今後、農産物の増産技術の開発につながると期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 生産機能研究グループ
研究員 木羽 隆敏 (きば たかとし)
グループディレクター 榊原 均 (さかきばら ひとし)