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2014年5月23日

理化学研究所

ポリコム複合体は従来の概念とは異なる順序でDNAに結合する

-異性型ポリコム複合体の重要性を証明-

ポリコム複合体がDNAを認識する順番の図

図 ポリコム複合体がDNAを認識する順番

細胞の運命は、多能性を維持した未分化の細胞(幹細胞など)の時期に決定されます。その時期には、運命決定に関わるさまざまな遺伝子の発現(オン)・抑制(オフ)が切り替わるのですが、この切り替えを管理しているのが「ポリコムタンパク質群」です。ポリコムタンパク質群は、標的となるDNAの特定の部分で巨大な複合体「ポリコム複合体」を形成し、標的遺伝子を不活性化(発現抑制)します。これまで、ポリコムタンパク質群は、PRC1とPRC2という2つのポリコム複合体を形成し、この複合体がDNAに結合することで遺伝子の発現を抑制していることが知られていました。ところが、最近になって、PRC1には従来型PRC1のほかに「異性型PRC1」が存在することが明らかになりました。異性型PRC1の性格や機能は、まだ解明されていません。

理研と英国オックスフォード大学の共同研究グループは、ポリコムタンパク質群がどのように複合体を形成し、どのような順番でDNAに結合していくかを調べるため、人工染色体(BAC)を用いる独創的な手法を開発しました。この手法を使うと、特定のポリコムタンパク質だけをDNAに結合させ、その機能を培養ES細胞によって解析できます。実験の結果、ポリコム複合体のDNAへの結合の順序は、従来の概念とはまったく異なることが分かりました。これまでは、PRC2が最初にDNAに結合し、PRC1を呼び寄せて遺伝子発現を抑制すると考えられていましたが、最初に異性型PRC1がDNAに結合し、次いでPRC2、PRC1という順番であることが分かりました。また、異性型PRC1の機能を確認するため、異性型PRC1がDNAに結合できないようにしたところ、全てのポリコム複合体が結合できず、遺伝子の発現抑制ができなくなりました。さらに、異性型PRC1の生体での機能確認を、異性型PRC1の遺伝子結合領域を欠失させたマウスで行いました。その結果、異性型PRC1が発生に必須であること、正常な骨の形態形成に重要であることが明らかになりました。

遺伝子の発現調節メカニズムの解明は、形態形成だけではなく、細胞の正常な分化・脱分化の過程の解明やES細胞、iPS細胞などの幹細胞の分化コントロールなど、発生に関わるさまざまな場面で重要です。ポリコム複合体による遺伝子発現制御の詳細な仕組みを明らかにしていくことは、再生医療やがん治療への応用にもつながると考えられます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 免疫器官形成研究グループ
研究生 近藤 隆 (こんどう たかし)