広報活動

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2014年6月9日

理化学研究所

抗体を産生する免疫応答に重要なT細胞の動きを制御する仕組みを解明

-脂質メディエーターの受容体(S1PR2)によるT細胞の局在制御-

リンパ節内におけるT細胞およびTFH細胞の動きの図

リンパ節内におけるT細胞およびTFH細胞の動き

私たちの体には免疫応答という防御機能があり、細菌やウイルスなどの外敵に対抗しています。免疫細胞のB細胞が体内に侵入した抗原を排除するために抗体を作るのも免疫応答の1つです。さらに、免疫組織にいるB細胞は、自身が存在する濾胞(ろほう)という場所の中に作られる胚中心と呼ばれる場所で、自らが作り出す抗体の性能を高め、抗原の再侵入時に素早く対応できるように変化することが知られています。これを「胚中心反応」と呼びます。

胚中心反応を行うには、免疫細胞であるT細胞の一種「濾胞性ヘルパーT細胞(TFH細胞)」の協力が必要です。これまで、TFH細胞が本来の居場所から移動してB細胞の濾胞での胚中心反応に参加するには、TFH細胞表面に発現して細胞の移動能力を変化させる役割を持つケモカイン受容体「CXCR5」が重要だとされていました。しかし、最近の研究で、CXCR5を欠損した場合でも、TFH細胞が胚中心から無くならないことが分かりました。理研の研究者を中心とした共同研究チームは、「ケモカイン受容体以外にもTFH細胞の移動を制御している因子が存在するのではないか」との仮説を立て、その制御の仕組みの解明に挑みました。

共同研究チームは、脂質から作られる生理活性因子「脂質メディエーター」の1つであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)の受容体「S1PR2」に着目しました。S1PR2の発現とその働きを詳細に解析することで、S1PR2が胚中心におけるTFH細胞の局在を制御するメカニズムや、胚中心のTFH細胞が胚中心反応で果たす役割を明らかにしようと試みました。

遺伝子改変マウスやライブイメージング技術を用いた実験の結果、S1PR2が胚中心TFH細胞に強く発現することや、胚中心TFH細胞が胚中心内にとどまるためにS1PR2が必要であることが分かりました。また、CXCR5とS1PR2の両方を欠損させたマウスで実験したところ、CXCR5、S1PR2とも欠損したT細胞は、胚中心を形成し維持することができませんでした。さらに、野生型T細胞が共存する中で胚中心を形成させてT細胞の局在を調べると、CXCR5を欠損したT細胞は胚中心の中に観察されましたが、CXCR5とS1PR2両方を欠損したT細胞は、胚中心の中にほとんど観察されませんでした。 これらから、S1PR2はCXCR5と協調してT細胞の胚中心への局在を制御しており、胚中心TFH細胞の存在が胚中心の形成や維持に必要なことが示されました。

今回の成果を応用し、胚中心TFH細胞の局在を制御できれば、将来的により良い抗体の長期的な産生を目的としたワクチン療法の開発や改良が図れると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 組織動態研究チーム
チームリーダー 岡田 峰陽 (おかだ たかはる)