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2014年6月24日

理化学研究所

グラフェンの物性制御に向け新しい「炭素-酸素結合」の構造を解明

-「エノラート」構造が「エポキシ」構造に比べより安定的に生成-

酸化グラフェンのエノラート構造の模式図とエネルギーダイアグラムの図

酸化グラフェンのエノラート構造の模式図とエネルギーダイアグラム

グラフェンとは、炭素原子同士の結合によってできた、蜂の巣のような六角形格子構造のシートのことです。光速に近い電子移動度を持つため、シリコンに替わる高機能電子デバイス材料として注目されています。電子デバイスとして応用するには材料の電子的性質の制御が必要ですが、グラフェンにはほとんど電気抵抗がありません。そのため、グラフェンに半導体的な性質である「バンドギャップ(電流が流れないエネルギー領域で、それ以上のエネルギーを与えると電子ホールが生れて電流が流れる)」を持たせ、電流の流れを制御する方法の開発が待たれています。現在は、酸素と反応させて作る「酸化グラフェン」が、ハンドギャップを持つようになるため有望とされています。ただ、炭素と酸素の結合がどのような構造を持つかは明らかにされず、これまでは、酸素原子1つがグラフェン表面の炭素原子2つと結合する「エポキシ」構造であるとする説が有力とされていました。

理研の研究チームは、銅などの金属電極にグラフェンが接触した場合の酸化反応性や生成物の構造安定性、電子物性などを調べるため、電子密度から電子系の物性を計算できる「密度汎関数理論」を用いて高精度な計算を行いました。その結果、これまで予測されなかった、酸素原子1つが炭素原子1つに結合する「エノラート」構造が、「エポキシ」構造よりも安定に生成されることが分かりました。エノラートは、原子が電子を引き寄せる強さを示す電気陰性度が高く、エポキシより化学活性が高い化学種です。また、安定に生成される理由が、金属とグラフェンの接触によって、グラフェン表面の電子状態が大きく変化することにあることも突き止めました。

金属電極に接触しているグラフェンが酸素との反応によって形成した「炭素-酸素結合」がエノラート構造であることが明かになりました。エノラートの高い化学活性によって新しい官能基(有機化合物の性質を決める特定の原子の集まり)の導入が容易になり、より体系的で高効率の化学修飾が可能になると考えられます。今回の成果により、多様な官能基の修飾による電気伝導性の制御ができ、グラフェンを用いた次世代の電子デバイスの開発に弾みがつくと期待できます。

理化学研究所
准主任研究員研究室 Kim表面界面科学研究室
准主任研究員 金 有洙 (キム ユウス)