広報活動

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2014年6月24日

理化学研究所

ヒトiPS細胞の分化多能性を維持・向上させる新たな因子を発見

-フィーダー細胞を使わずヒトiPS細胞の安定した培養を可能に-

bFGF/CCL2添加下のヒトiPS細胞の多能性マーカー遺伝子発現レベル

多様な細胞に分化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)は、創薬や再生医療への応用が期待されています。しかし、その性質は同じ哺乳類でもマウスとヒトで大きく異なります。マウスiPS/ES細胞に比べて、ヒトiPS/ES細胞はやや分化が進んだ状態であり、分化多能性を維持したまま培養するためには、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の添加や、幹細胞の培養条件を整えるフィーダー細胞を必要とします。フィーダー細胞の調整には手間がかかり、また通常はヒト以外の生物から得た細胞に由来するため、異種細胞混入の危険性があります。そこで、iPS細胞の臨床応用に適した培養法としてフィーダー細胞なしで分化多能性を維持できる方法の確立が求められています。

理研の研究者を中心とした研究グループは、これまでに、マウスiPS/ES細胞において、「CCL2」というタンパク質を培地に添加すると、分化多能性が向上することを発見していました。今回、ヒトiPS細胞の培養でbFGFの代わりにCCL2を添加したところ、ヒトiPS細胞でも多能性に関わる遺伝子の発現が著しく増加しました。そこで、CCL2を添加したヒトiPS細胞で発現が変化した遺伝子の全体像を、理研が開発した遺伝子の転写開始点を網羅的に同定できる「CAGE」法を使って詳しく調べました。その結果、CCL2を添加して培養したヒトiPS細胞では、細胞が低酸素状態に置かれたときに働く遺伝子群も活性化していることが分かりました。低酸素環境では、iPS/ES細胞の分化が抑制されます。したがって、CCL2は低酸素に対する細胞応答と似た状態を誘導することで、分化多能性の維持・向上に関わっている可能性が示されました。さらに、CCL2とLIFの両方を培養に使用したところ、フィーダー細胞なしに分化多能性を維持したまま、ヒトiPS細胞を培養することに成功しました。

CCL2が持つ分化多能性の維持・向上作用を利用することで、iPS細胞からの分化誘導効率が高くない標的細胞も、短時間で高効率に作成できるようになると期待できます。