広報活動

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2014年7月9日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人琉球大学

シロアリの後腸に共生バクテリアによる新たな代謝経路を発見

-シロアリのセルロース代謝経路の全体像が明らかに-

今回の微生物群丸ごと代謝解析の概要と今後の展望の図

今回の共生微生物群丸ごと代謝解析の概要と今後の展望

シロアリというと、家屋の基礎を食い尽くす害虫としてのイメージが強いですね。しかもアリではなくゴキブリの仲間です。嫌われ者でも仕方がないかも知れません。しかし、生態学の分野では森林生態系の物質循環に貢献する貴重な生物種とされ、セルロースを利用する昆虫としても知られています。また、多様な共生微生物が体内に生息する共生系のモデル生物で、集団的な階級社会を作る“社会性昆虫”とも呼ばれています。腸管内の共生微生物群レベルから宿主集団まで、多階層にわたって複雑なミニ生態系を形成しています。

シロアリは、腸内に共生する多様な微生物群によってセルロースを分解してエネルギーとして利用しているほか、代謝物の一部を自身の筋肉の原料となるアミノ酸に代謝しています。世界で年間30~70億トンもの樹木のセルロース系材料を分解し、自身の体を形成するとともに、他の捕食者の餌となって生物多様性を維持しています。理研と琉球大学の共同研究チームは、シロアリのセルロース代謝経路の全体像をつかむため、新たな解析手法を用いました。

共同研究チームは、屋久島で採取したオオシロアリに、安定同位体の「13C」で標識化したセルロースを餌として与え、腸管を前腸、中腸、後腸前部、後腸後部の4区画に分け、2次元NMR(核磁気共鳴)法で代謝物群の解析を網羅的に行いました。酵素学的解析や遺伝子発現パターンで予測されていたシロアリ自身がもつ分解酵素によるセルロース分解が、前腸で開始される様子や、中腸で分解と吸収が行われ各代謝系へ入っていく様子が可視化されました。これらの結果から、これまで個々に予測されていたセルロースの代謝経路の全体像が明かになりました。

また、後腸での共生バクテリアの代謝を介した新たなセルロース代謝経路があることが分かりました。さらに、必須アミノ酸を他の個体との栄養交換で摂取するという、シロアリと腸管内の微生物群およびシロアリ個体同士の共生における「栄養交換メカニズム」の一端も解明しました。

生態系全体で起きていることを包括的に可視化して理解するには、実際に流通している化合物の流れを可視化し、遺伝子の発現パターンなどとの相関を導く手法の開発が不可欠です。今回の研究では、従来の遺伝子情報だけでは分からなかった、個体間の栄養交換による窒素代謝システムなど、さまざまな高次機能について新しい知見を得ることができました。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 統合メタボロミクス研究グループ 環境代謝分析研究チーム
チームリーダー 菊地 淳 (きくち じゅん)