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2014年7月25日

理化学研究所

超伝導回路を用いてパラメトロンを実現

-高精度、高速、非破壊な量子ビット単一試行読み出しへ応用-

パラメトロンを用いた量子ビットの読み出しの図

パラメトロンを用いた量子ビットの読み出し

1950年代という日本のコンピュータ黎明期に、「パラメトロン」という計算機用の演算素子が東京大学の若い研究者によって開発されました。2つのパラメトリックな発振状態を0、1のビットとして用いる計算機は「パラメトロン計算機」と呼ばれて商用化もされましたが、トランジスタの普及に伴い市場から姿を消しました。しかし、近年、パラメトロンの原理が、微小な機械振動子や非線形光学素子などの物理系で話題になっています。基礎物理の学問的興味だけでなく、革新的性能を持つ新しいコンピュータ開発への応用という観点からも注目を浴びています。理研の研究チームを中心とした共同研究グループは、超伝導回路を用いることで、素子の消費電力がゼロで、低雑音性が実現できるパラメトロンを作製しようとしました。

共同研究グループは、磁束計に用いる超伝導磁束量子干渉計を超伝導共振回路に組み込んでパラメトロンを作製しました。パラメトロンとしての動作を証明するために、入力シグナルに対して発振が正しく起こっているかどうかを確認しました。デジタル位相変調シグナルを入力して発振出力を調べたところ、入力シグナルは1フェムトワット(10-15ワット)と微弱でしたが、出力シグナルは変調位相に応じて正しく変化し、パラメトロンを実現していることが分かりました。また、0.02%という低いビットエラーレート(符号誤り率)で復調できることも分かりました。

作製したパラメトロンの検波機能を超伝導量子ビットの読み出しに応用したところ、90%を超える非常に高い精度で「単一試行の読み出し」に成功しました。これによって、読み出しのシグナル強度を小さく保って非破壊性を確保したまま、読み出しのスピードを高速化できます。高精度・高速な単一試行読み出しは、量子コンピュータ実現に不可欠な「量子計算のエラー訂正」に利用可能です。また、超伝導回路を用いた新しいコンピュータ素子への応用も期待できます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 巨視的量子コヒーレンス研究チーム
チームリーダー 蔡 兆申 (ツァイ ヅァオ シェン)