広報活動

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2014年8月18日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学
国立大学法人東北大学

異常量子ホール効果の量子化則を実験的に検証

-トポロジカル絶縁体を用いた省電力素子の基礎原理確立へ-

整数量子ホール効果と異常量子ホール効果の縦伝導度と横伝導度の関係性の図

(a)整数量子ホール効果と、(b)異常量子ホール効果の縦伝導度と横伝導度の関係性

半導体試料の積層構造に強い磁場をかけると、試料の端にエネルギーの損失なく電流(エッジ電流)が流れます。この現象は「整数量子ホール効果」と呼ばれ、低消費電力デバイスなどへの応用が期待されています。ただ、この効果を利用するには強い磁場が必要になるという欠点があります。

近年発見された「トポロジカル絶縁体」という物質は、内部が絶縁体状態なのに表面は金属状態を示す物質です。半導体と比べ、表面では不純物の影響を受けずに電気を流すことができるという、特別な性質をもっています。これに磁性元素を添加したものが「磁性トポロジカル絶縁体」で、物質内部に磁化をもつ強磁性体にもなります。特殊な金属状態であることと、強磁性体にもなれるという性質によって、無磁場でも量子ホール効果が現れます。この現象を、外部磁化がなくてもエッジ電流が発生できることから、整数量子ホール効果とは区別して「異常量子ホール効果」と呼んでいます。異常量子ホール効果では無磁場でエッジ電流が発生し、物質内部の磁化の向きが反転するため、磁化を反転するだけの小さなエネルギーでエッジ電流を制御できる、というメリットがあります。異常量子ホール効果と整数量子ホール効果は似ている現象ですが、両者の関連性を実験的に検証した例は、これまでありませんでした。

理研、東京大学、東北大学の研究者による共同研究グループは、トポロジカル絶縁体の1つに磁性元素のクロム(Cr)を添加した[Cr0.22(Bi0.2Sb0.8)1.78Te3]の薄膜を、半導体基板上に作製しました。試料内部の電子数を連続的に変化させるため、電荷密度を変えることができる電界効果型トランジスタ構造としました。電子数を変化させながらホール抵抗を測定したところ、ホール抵抗が量子化抵抗値(約25.8kΩ)で一定になり、試料が異常量子ホール状態になっていることを確認しました。さらに、自らの磁化が磁場の代わりとなっていることで、外部磁場がなくても誘起される異常量子ホール効果の縦伝導度と横伝導度に関する「量子化則」が、外部磁場で誘起される整数量子ホール効果と同様の振る舞いを示すことを発見しました。この結果から、両ホール効果は同様の量子化則で理解でき、本質的に同じ現象であると結論付けました。

この成果は、異常量子ホール効果についての理解をさらに深め、無磁場でエッジ電流を利用した省電力素子の実現を前進させるものといえます。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関界面研究グループ
グループディレクター 川﨑 雅司 (かわさき まさし)