広報活動

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2014年9月13日

独立行政法人理化学研究所
キリン株式会社
国立大学法人 東京工業大学
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日本大学
国立大学法人 千葉大学

ジャガイモの有毒アルカロイド生合成酵素遺伝子を同定

-ジャガイモ食中毒の低減が図れる育種に期待-

24(28)位還元反応と24(25)位還元反応の1例の図

24(28)位還元反応と24(25)位還元反応の1例

「ジャガイモの芽には毒があるから取らなきゃダメ」と、学校の家庭科の料理実習で教わった経験があります。この有毒物質は「ステロイドグリコアルカイド(SGA)」といわれるもので、SGAにも種類があってジャガイモに含まれているのは、α-ソラニン、α-チャコニンなどだそうです。安心して食べられるジャガイモを作るにはSGAの含有量を下げなければならなりません。これまでの研究で、SGAはコレステロールを中間体として生合成されることが知られていました。しかし、植物に含まれるステロールの中ではコレステロールの量が少ないため、SGAの詳しい生成メカニズムは明らかではありませんでした。そこで、理研、食品会社、大学の研究者からなる共同研究グループは、SGA生成メカニズムの解明に取り組みました。

植物が有する主なステロールとして、「24-アルキルステロール」が知られています。コレステロールと24-アルキルステロールの化学構造上の違いは、24位アルキル基を持つかどうかです。24位アルキル基は、メチル基転移反応と24(28)位還元反応を受けて生成されます。例えば、シロイヌナズナでは、「DWF1」酵素が24-アルキルステロールを生合成するときに24(28)位還元反応を触媒します。一方、ヒトを含む動物ではDWF1の相同体(ホモログ:共通の祖先を持つタンパク質)の「DHCR24」が、コレステロール生合成における24(25)位還元反応を触媒します。

共同研究グループは、ジャガイモやトマトで発現している遺伝子群の中に、DWF1と DHCR24のホモログと考えられるタンパク質の遺伝子が2種類含まれていることを発見し、それぞれを「SSR1」、「SSR2」と名付けました。次に、出芽酵母を用いた異種遺伝子発現実験を行ってSSR1、SSR2の酵素機能を評価したところ、とくにSSR2は24(25)位還元反応の触媒活性を強く示し、SGAの生合成中間体であるコレステロールの生合成に関わっていると考えられました。

さらに共同研究グループは、RNA干渉法を用いてSSR2遺伝子の発現を抑制した遺伝子組換えジャガイモと、ゲノム編集法を使ってSSR2遺伝子を破壊した遺伝子組換えジャガイモを作りました。これらのSGA含有量を分析したところ、遺伝子組換えのないジャガイモの1割程度に低下していました。これはSSR2がSGAの生合成に関わっていることを示しています。

この成果は、SSR2遺伝子を標的としてSGAの量を抑えたジャガイモの育種に貢献すると期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 統合メタボロミクス研究グループ
グループディレクター 斉藤 和季 (さいとう かずき)
(千葉大学 大学院薬学研究院 教授)
研究員 澤井 学 (さわい さとる)