広報活動

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2014年9月18日

独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学

巨大ブラックホールが支配する「AGNエンジン」の解明へ

-吸い込むガスの重力エネルギーが2種類のX線放射に変換される-

活動銀河核「NGC 3227」と推測される巨大ブラックホール周辺の構造図

活動銀河核「NGC 3227」と推測される巨大ブラックホール周辺の構造
写真提供:Ken Crawford

宇宙に存在するほぼ全ての銀河の中心には、太陽の10万~10億倍の質量を持つ巨大なブラックホールが1個ずつ存在するといわれています。その中には、激しくガスを吸い込むことで周辺が主にX線や可視光で輝き、銀河中に存在する1千億個もの星の総量を上回るエネルギーを放射するものが存在します。これを「活動銀河核(AGN)」といいます。この強大な放射は、ブラックホールに吸い込まれるガスの重力エネルギーが、効率よく放射エネルギーに変換される結果と考えられます。この変換機構を、化学エネルギーを動力に変換する自動車エンジンになぞらえて「AGNエンジン」と呼んでいます。これまで、AGNから放射されるX線などの観測データを用いてAGNエンジンの機能や構造の解析が試みられてきましたが、未だに詳細は解明されていませんでした。

理研と東京大学を中心とした共同研究グループは、X線天文衛星「すざく」が観測したAGNを持つ銀河「NGC 3227」からのX線信号の激しい強度変動と個々のX線光子が持つエネルギーの変化に着目しました。これを詳しく解析した結果、巨大ブラックホールへのガスの流入量が少ない時には、放射量が少なくエネルギーが高めのX線で構成される成分(成分1)が数週間かけて穏やかに変動していました。一方、流入量がある境界値を超えると、エネルギーが低めのX線で構成され、数時間で放射量を激しく変動させる別の成分(成分2)が現れ、この成分の出現によって全体の放射量が増大し始めることが分かりました。

研究で明らかになった2つのX線成分は、個々の光子が持つエネルギーが異なることから、巨大ブラックホールの周辺の温度や密度が異なる別々の領域で作り出されたものと考えられました。このことから、ブラックホールへのガスの流入量が少ない時には成分1の領域が現れるのに対し、流入量が境界値より大きくなると、成分2の領域が現れ、これが成分1に加わって明るく輝き始めるという、新しいAGNの機能や構造が分かってきました。つまり、巨大ブラックホールに吸い込まれる「燃料」であるガスの量が増え、AGNエンジンからの出力があるレベルを超えると、さらに出力を大きくするために「エンジン」の動作を切り替えているわけです。

2015年度には、日本の次期X線天文衛星「ASTRO-H」の打ち上げが予定されています。ASTRO-Hを用いれば、高いエネルギーのX線を、これまでにない高い感度で観測できるようになります。これにより、巨大ブラックホールの周辺が明るく輝く仕組みである「AGNエンジン」の機能や構造の全貌が解明される可能性があります。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 玉川高エネルギー宇宙物理研究室
基礎科学特別研究員 野田 博文 (のだ ひろふみ)