広報活動

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2014年10月21日

独立行政法人理化学研究所
スウェーデン ウプサラ大学

無汗症患者の原因遺伝子を発見

-IP3受容体が機能しないと発汗できない-

ヨウ素デンプン反応による患者の発汗の様子(左)と無汗症患者でみつかった2型IP3受容体の変異(右)の図

図 ヨウ素デンプン反応による患者の発汗の様子(左)と無汗症患者でみつかった2型IP3受容体の変異(右)

私たちが汗をかくのは、体温を一定に保つためです。汗は蒸発時に身体の熱を奪い体温を下げます。もし、発汗ができないと熱中症やめまいを発症しやすく、重症化すると意識障害などを起こすこともあります。汗をかくことができない「無汗症」という疾患があり、その原因として汗腺の形成不全や交換神経の異常などが挙げられていますが、その他の原因で発症する無汗症はこれまで報告されていません。理研の研究者とスウェーデン・ウプサラ大学との共同研究グループは、パキスタンで特異な先天性無汗症を発症する家系を発見し、それを引き起こす原因遺伝子を明らかにすることに取り組みました。

発見した先天性無汗症患者を調べたところ、汗腺の形成不全や交換神経の異常が見られず、発汗の異常以外は健常者と変わらないことが分かりました。また、家族全員に症状が出ていないことから、原因とされる遺伝子は常染色体劣性遺伝子であると推測しました。そこで、劣性遺伝子疾患の原因遺伝子を特定できる手法を用いて、近親婚家系のDNAサンプルを用いてさらに詳しく解析しました。その結果、この疾患の原因遺伝子が2型イノシトール三リン酸(IP3)受容体を発現する遺伝子であることが分かりました。IP3受容体は細胞外からの刺激に応じてカルシウムを細胞内に放出し、細胞内のカルシウム濃度を調節する役目を担っています。

共同研究グループは、2型IP3受容体にあるカルシウムイオンチャンネル形成領域(カルシウムイオンを通す小さな穴の部分)に、点変異と呼ばれるタンパク質中の1つのアミノ酸の置き換えがあることを発見し、この変異が2型IP3受容体の機能を阻害していることを突き止めました。また、マウスを用いた実験を行い、2型IP3受容体を欠損したマウスでは、汗腺の細胞内カルシウム量が低下し、汗の分泌量が野生のマウスに比べおよそ1/6に減っていることを発見しました。これらの結果から、汗腺細胞に発現する2型IP3受容体からのカルシウム放出は、ヒトとマウスの発汗に重要な働きをしていることが明らかになりました。

今回の成果により、今後、IP3受容体の活性を制御することによって無汗症や多汗症を治療する方法の確立が期待できます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 発生神経生物研究チーム
チームリーダー 御子柴 克彦 (みこしば かつひこ)