広報活動

Print

2014年10月24日

理化学研究所

真空より低い屈折率を実現した三次元メタマテリアルを開発

-電子ビームと金属の自己組織化で大きなサイズ(数mm角)を実現-

試作した1軸等方性三次元メタマテリアル図

試作した1軸等方性三次元メタマテリアル

「メタマテリアル」という物質があります。すでにご存じの方も多いと思いますが、日本語では“超越物質”ということになるのでしょうか。「光の波長よりも細かな構造を人工的に導入し、その構造と光との相互作用を利用することで、物質の光学特性を人工的に操作した疑似物質」と定義はやや硬くなりますが、要するに「光を自由自在に操ることができるようにする人工物質」のことです。メタマテリアルを使えば、理論的には、屈折率がゼロあるいはマイナスになる自然界ではあり得ない物質を生み出すこともできるとされます。物質境界面で発生する光の反射を除去したり、光を空間中に止めたりといった現象も視野に入ってきています。「透明マントも夢ではない?」いいえ、もう実現間近です。

理研と台湾大学などの研究者は共同で、真空の屈折率1.0よりも低い屈折率0.35を実現した三次元メタマテリアルを作製しました。電磁波(光)に応答するマイクロメートル(μm)~ナノメートル(nm)の極小サイズの共振器アンテナ素子を三次元的に加工し、シリコン基板面に垂直な方向に対し、縦、横、斜め方向に立体的に配置して、どの方向からの光に対してもメタマテリアルの特性を発揮できるようにしました。また、大きさも、これまでは1辺が数μm~数百μm程度が最大でしたが、数mm角という大サイズ化に成功しました。

三次元で微細形状を持つメタマテリアル素子を、大きな面積で高精度加工するというのは非常に難しい課題でした。そのため、共同研究グループは、トップダウン手法と呼ぶ「光リソグラフィー法などの露光パターンを、人間が精密に制御して微細構造を高精度で加工する手法」と、ボトムアップ手法と呼ぶ「物質の特性を生かして自己組織的に形状を作り上げる手法」を融合させることにしました。これによって、共振アンテナ素子となる金属リングの大きさや配置間隔・方向を高精度に制御できると同時に、個々のリングは材料自身が形状を作っていくので、体面積かつ立体的な金属構造を効率よく加工することが可能になりました。

今回、作製に成功した三次元メタマテリアルでは、その中を進む光の速度が真空中の光速より約3倍速くなります。この性質は透明化技術の実現に必須のものです。屈折率が低いメタマテリアルの実現は、既存のレンズの屈折力を高め、解像力や集光能力の改善などレンズを高性能化します。また、屈折率の分散を大きく変化させる技術として見ると、高速で安定した光通信実現などの応用につながります。

理化学研究所
准主任研究員研究室 田中メタマテリアル研究室
准主任研究員 田中 拓男 (たなか たくお)