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2015年1月27日

理化学研究所

単一サイクルX線パルスを発生するXFEL手法を考案

-“光のすり抜け”を光波の干渉で制御-

図

図1 波長よりバンチ長が短い電子ビームからの光の放射と、マイクロバンチがある規則に従って並んだ電子ビームからの光の放射の比較

「単一サイクル光パルス」とは、発光している間に、光の波がわずか1回だけ振動する光です。瞬く間?いいえ、そんな悠長な間ではありません。1,000兆分の1秒とか、100京分の1秒とかの世界を切り取る光です。ただ、単一サイクル光パルスは、可視光や赤外線領域ではすでに当たり前になっている技術で、パルス幅が数フェムト秒(1フェムト秒は10-15秒)という短パルスであることを生かして、化学反応の過程をストロボ撮影のように観察できます。また、波長がより短い極端紫外線領域で、パルス幅が数100アト秒(1アト秒は10-18秒)という単一サイクル光パルスの利用も可能になってきています。

これらの超短パルス光より、さらに短いパルス幅を目指すには、より波長の短いレーザーが必要です。このため、高エネルギー電子ビームからの放射による位相のそろったレーザーであるX線自由電子レーザー(XFEL)の利用が期待されています。しかし、XFELで単一サイクル光を発生させる原理や手法は、まだ開発されていません。放射光科学センターの田中主任研究員は、XFELでの単一サイクル光に実現しようとパルス幅の制御手法の開発に挑みました。

電子ビームは、光を増幅するために周期的磁場を蛇行しながら通過する際に、電子ビーム自身が生成した光から取り残され、光が電子ビームをすり抜けて前方に移動します。これによって1回の蛇行で1つの光波が生成されるとともに、前方に移動するため、N回の蛇行運動ではN個の波が生まれ、パルスの幅が伸びてしまいます。これを「光のすり抜け効果」といいます。そこで、n周期目のすり抜け距離がn番目のマイクロバンチ(波長より短い電子の塊)の間隔と等しくなるように磁場を調整することで、一定の周期を経過した後は、共鳴パルスの位置で各周期で生成された光波が強め合って強度が増強する一方、その位置から離れるに従って強度が減衰します。田中主任研究員は、その強度の度合いは、すり抜け距離(磁場振幅の変化率)によって調整でき、究極的には単一サイクル光パルスを実現できると考えました。

考案した手法の有効性を確認するために、エネルギー2GeV(ギガエレクトロンボルト)、電流2kA(キロアンペア)の電子ビームに適用した場合についてシミュレーションしたところ、波長8.6nm(ナノメートル)、ピークパワー1.2GW(ギガワット)の単一サイクルX線パルスを発生できることを確認しました。本手法を硬X線領域にまで拡張できれば、パルス幅数ゼプト秒(1ゼプト秒は10-21秒)という超高速現象を追求する領域に到達することができます。

理化学研究所
放射光科学総合研究センター 先端光源開発研究部門 田中次世代X線レーザー研究室
主任研究員 田中 隆次 (たなか たかし)