広報活動

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2015年1月30日

理化学研究所

慢性肝炎や肝硬変は肝内胆管がんのゲノム異常と発生に強く関与

-全ゲノム解析により肝内胆管がんの悪性度に関わる遺伝子変異を発見-

塩基置換パターンに基づく、肝内胆管がんと肝細胞がんのゲノム全体でみた変異パターンの類似状況の図

塩基置換パターンに基づく、肝内胆管がんと肝細胞がんのゲノム全体でみた変異パターンの類似状況

最初にがんが発生した場所が肝臓であるがんを原発性肝臓がんといい、その約90%を肝細胞がんが占めます。ただ、5~10%程度と数は少ないものの、「肝内胆管がん」は肝細胞がんよりも悪性度が高い難治性のがんとして知られています。肝内胆管がんは、肝臓内で胆汁を運ぶ胆管から発生するがんで、肝臓内の胆石や慢性胆管炎はその発生リスクとされています。最近では、B型肝炎やC型肝炎などの慢性肝炎や、慢性肝炎を経て発症する肝硬変も、発生のリスク要因であると報告されています。しかし、発生にいたる詳しいメカニズムは、まだ明らかにされていません。

研究グループはまず、B型肝炎やC型肝炎患者を含む30症例の肝内胆管がんの組織と血液からDNAを抽出し、それらのゲノム情報を次世代シーケンサーとスーパーコンピュータを使って解読し、肝内胆管がんに起きているゲノム変異をすべて同定しました。次に、同様な方法で得た60例の肝細胞がんのゲノム変異との比較を行いました。その結果、肝内胆管がんの全ゲノム上で、1つの腫瘍につき平均で約4,300箇所の変異が発見されました。それらの変異の塩基パターンによって、肝内胆管がんは慢性肝炎のある腫瘍とない腫瘍の2つに分類され、慢性肝炎のある肝内胆管がんの塩基置換パターンが、肝細胞がんと類似していることが分かりました。またB型肝炎ウイルスのゲノム配列が、複数の肝内胆管がんのゲノム中に挿入されていることも発見しました。これらの結果は、B型肝炎やC型肝炎などの慢性肝炎や、それによって起きる肝硬変が、ゲノム異常を引き起こし、肝内胆管がんの発生に強く関与していることを示しています。

さらに、肝内胆管がんの変異遺伝子は、肝細胞がんで高頻度に変異している遺伝子と一致していることが分かりました。一方で、肝外胆管がんという、肝臓の外に発生した胆管がんで特異的に見つかる遺伝子の変異が肝内胆管でも見つかり、これらの遺伝子の変異がある肝内胆管がんは、より悪性度が強く生存率が低いことが分かりました。これらの結果から、肝内胆管がんは、肝細胞がんと肝外胆管がんの中間的な位置づけとなるがんであり、慢性肝炎を要因として発生する肝内胆管がんは、より肝細胞がんに近いがんであると考えられました。

こうした成果は、早期診断法や効果的な治療法がない肝内胆管がんに対する新規の治療法や診断法の開発に貢献すると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター ゲノムシーケンス解析研究チーム
チームリーダー 中川 英刀 (なかがわ ひでわき)
副チームリーダー 藤本 明洋 (ふじもと あきひろ)