広報活動

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2015年2月7日

独立行政法人理化学研究所
科学技術振興機構

タンパク質の「集合と拡散」による植物草丈制御の仕組みを発見

-植物の草丈を自在に制御する技術開発に貢献―

BSS1タンパク質の機能発現のモデル

「ブラシノステロイド」という植物ステロイドホルモンがあります。7種類ある植物ホルモンの1つですが、他の植物ホルモンが植物固有の物質で、かつ植物に限定的な生理活性を示すのに対し、ブラシノステロイドは動物や昆虫などの生物種にも類縁化合物があるなど、なかなかユニークな性質をもっています。植物の成長に重要な役割を果たすことも知られていますが、非常に高価であり、農業や植物バイオマスの増産にはほとんど利用されていません。また、植物の中でどのようなシグナル伝達を行い、機能しているのかも明らかにされていませんでした。

理研の研究者を中心とした共同研究グループは、ブラシノステロイドの機能を明らかにするために、ブラシナゾール(Brz)というブラシノステロイドの生合成経路を阻害する化合物を、実験植物のシロイヌナズナに添加し、ケミカルバイオロジー法(化学物質を使って生命の仕組みを明らかにする手法)を用いた実験を行いました。その結果、ブラシノステロイドのシグナル伝達を抑制するBSS1タンパク質を発見しました。次に、BSS1タンパク質の細胞内における動きを調べたところ、Brzによってブラシノステロイドを欠損した状態では、BSS1タンパク質は“集合”してタンパク質の大きな塊(複合体)を作り、植物の茎の伸長を抑制することが分かりました。これに対し、ブラシノステロイドを添加した場合は、BSS1タンパク質は“拡散”してタンパク塊は消失し、茎の伸長が促進されました。さらに、ブラシノステロイドの転写因子であるBIL1タンパク質が、BSS1タンパク質の“集合”によって捕捉され、“拡散”によって解放されることで、BIL1タンパク質の細胞質から細胞核への移行が制御されるメカニズムも明らかになりました。

植物の成長(草丈の伸長)の制御が、BSS1タンパク質の集合と拡散によって制御されるという研究成果により、植物の草丈を自在に制御できる技術の開発が進展し、植物バイオマス増産や植物への二酸化炭素固定化を進めていくための基盤技術の開発につながると期待できます。

理化学研究所
主任研究員研究室 長田抗生物質研究室
専任研究員 中野 雄司 (なかの たけし)
特別研究員 嶋田 勢津子 (しまだ せつこ)
(現:理研環境資源科学研究センター バイオマス工学連携部門 合成ゲノミクスチーム 研究員)
主任研究員 長田 裕之 (おさだ ひろゆき)