広報活動

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2015年4月22日

理化学研究所
(株)オーガンテクノロジーズ
慶應義塾大学医学部

摘出臓器の生体外長期保存・機能蘇生技術を開発

― 従来移植不適用な阻血状態ドナー臓器の利用拡大へ ―

阻血臓器の蘇生と移植による解析図

阻血臓器の蘇生と移植による解析

機能不全に陥った臓器を抜本的に治療するには移植以外に方法がありません。臓器移植を希望している患者は、現在、わが国で約14,000人以上に達していますが、これまでの国内における臓器移植の実施数は待機患者全体の15%程度に留まっています(日本臓器移植ネットワーク2014年報告)。一方、海外ではドナー数の増加を目指し、心停止ドナーの利用を推進しています。米国では、心停止ドナー数は脳死ドナー数と比べて4倍以上であり、ドナー不足を改善できると考えています。しかし、心停止ドナーの臓器は、移植に適した状態であるものは少なく、臓器状態の悪化から廃棄される割合が半数近くにも上っており、心停止ドナーの利用が進まない原因となっています。理研の研究者らの共同研究グループは、現在の臓器移植治療の課題である、ドナー臓器の安定した長期保存と、移植不適応となった心停止ドナーの肝臓を蘇生し、安全に臓器移植への利用を可能とする培養システムの開発を目指しました。

共同研究グループは、ポンプで臓器の血管内に血液を送り、生体の血液の循環を再現できる臓器灌流(かんりゅう)培養システムを開発し、このシステムを用いて実験を行いました。まず、ラットから摘出した肝臓を、酸素運搬体として赤血球を加えた培養液を用いて48時間にわたって灌流培養しました。すると、22℃の保存温度域で、肝臓は生体から摘出したばかりの肝臓と同じ組織構造を維持していました。尿素や胆汁、アルブミンの合成も認められ、肝機能が維持されていることが分かりました。次に、移植した肝臓の再生能を調べるため、臓器提供を受けるラットが本来持っている肝臓を、移植後7日目に70%部分切除して、移植した肝臓への血流を増加させ再生を誘導する実験を行いました。一般的な手法である低温保存で培養した肝臓と灌流培養システム(赤血球添加条件)で培養した肝臓を、それぞれ移植した場合の生存率を比較したところ、低温保存後の肝臓では生存率が低下しましたが、灌流培養した肝臓を移植したラットの生存率は100%でした。

さらに、臓器内のアデノシン三リン酸(ATP)量を可視化できるラットの肝臓を使い、温阻血(心停止)により移植不適合になった肝臓を、灌流培養して別のラットに移植しました。その結果、そのラットの生存が認められ、機能不全の肝臓が蘇生したことを確認しました。

今回の研究成果によって、現在の移植医療の課題を解決し、そのレベルをさらに向上させることができる可能性を示しました。さらに未来の再生医療である再生臓器育成機器の開発にもつながると期待できます。

理化学研究所
多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム
チームリーダー 辻 孝 (つじ たかし)