広報活動

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2015年5月5日

理化学研究所
カリフォルニア大学デイビス校

生体内の低分子化合物を網羅的に捉える解析プログラムを開発

-MS-DIALによる次世代メタボロミクス-

図 MS-DIALプログラムにおける化合物同定の流れ

遺伝子やたんぱく質以外の生体内の低分子化合物(低分子代謝物)の微細な変化を、網羅的かつ高解像度でとらえ解析する技術のことを「メタボロミクス」といいます。これまで熟練技術者だけが可能だった食品の品質管理や難病疾患の早期発見を、誰でも容易にできるようにする技術として注目されています。測定には、液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)が主に使われています。生体試料中の化合物群をクロマトグラフィーで分離した後、質量分析装置で解析することで個々の化合物構造を決定します。しかし、クロマトグラフィーで得られるデータ(スペクトル)の殆どは複数の化合物のスペクトルが混在したものであり、個々の化合物に由来すると明確に判断できる高精度なスペクトルは限られています。さらに、データベースに登録されている化合物情報も少ないことから、一度の分析で100~200程度の化合物しか同定できませんでした。理研の研究者を中心とした共同研究グループは、LC-MS/MSで得られる複雑なスペクトルを、正確かつ網羅的に解析できるプログラムの開発に挑みました。

共同研究グループは、複数の化合物に由来するデータを個々の化合物のデータに分離するアルゴリズムの開発に取り組みました。同時に、従来よりも広範なデータを網羅的に解析するために、生体を構成する主要な脂質分子構造から予測される保持時間と理論スペクトルを網羅する新しいデータベースの構築にも取り組みました。その結果、データを読み込みながら統計解析まで迅速に実行できる統合解析プログラム「MS-DIAL」の開発に成功しました。これにより、化合物から検出した全てのスペクトルから個々の化合物のスペクトルを選択的に取得することが可能となり、一度の解析で網羅的に低分子化合物を同定できようになります。

開発した手法を使えば、時間や場所を問わず、かつ誰が取得したデータであっても同じ同定結果が得られます。一過的な結果でしか議論できないという、従来のメタボロミクス問題点を解決する手法といえます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター メタボローム情報研究チーム
チームリーダー 有田 正規 (ありた まさのり)
特別研究員 津川 裕司 (つがわ ひろし)